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2018年11月6日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

中部圏社会経済研究所研究部長

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。12年4月より現職。

(写真:ロイター/アフロ)

 高度成長期に確立し、右肩上がりの人口や経済を前提として組み立てられている日本の財政・社会保障制度は、少子高齢化の進行、とりわけ高齢者に占める後期高齢者の割合が増加する「高齢者の高齢化」の進行により、その持続可能性が危ぶまれる状況が続いている。それは、人口ピラミッドが逆立ちすることが見込まれていたにもかかわらず、その抜本的な改革を断行せずに放置した結果、現状ではGDPの2倍に及ぶ政府債務が蓄積してしまっている。

 こうした日本財政の危機的状況にもかかわらず、日本政府には莫大な資産があるから増税や歳出削減なしでも財政破綻は起こり得ないとの主張も存在する。内閣府『国民経済計算』を見ると、国と地方に社会保障基金を加えた一般政府に日本銀行や日本学生支援機構、上下水道事業、地方公立病院等公的企業を加えたいわゆる統合政府の連結決算では、金融資産1,800兆円に対して公的債務1,251兆円となっており、両者を相殺すれば財政再建は確かに完了する。しかし、金融資産のうち、公的年金の積立金や公的金融機関から民間企業への貸出し、ODAなどを除くと1,020兆円となり、公的債務が上回る。金融資産の他、社会資本を売却すればよいとの主張もある。主要な社会資本を外国に抑えられたパキスタン、モルディブ、スリランカなどが債権国のくびきとなっている現状はそうした主張への雄弁な警告となる。そもそも、資産売却で債務を一時的に解消しても、財政赤字体質を放置したままでは元の木阿弥となるのは確実で、財政問題は何ら解決しない。

債務の発生原因は社会保障

 日本の社会保障制度はこれまでもっぱら高齢世代を給付の対象とし、現役世代は支える側とみなしてきた。高く持続的な経済成長が続く社会では、すでに引退したか引退間近の世代は、そうした経済成長の恩恵に与ることができず、後世代との豊かさの格差は拡大していく一方である。その場合、相対的に貧しくなっていく高齢者に相対的に豊かになる若者世代が所得移転を行うのは若者世代にとっても負担とはならない。また財政赤字が発生したとしてもマクロ経済や歳入が歳出に合わせてパラレルに成長していくのであれば、財政赤字の累積としての債務残高が経済規模に対して一方的に拡大していくことはないし、経済が拡大している期間においては租税弾性値が歳出弾性値を上回る場合が多く、当初の財政赤字を埋め合わせることが可能となるからである。

 したがって、経済成長の恩恵によって放っておいても豊かになる一方で、かつ企業により生活保障を受けていた現役世代に対する社会保障給付よりも経済成長の恩恵から取り残された高齢者により手厚く社会保障給付がなされ、高齢者を優遇することは正義に適っていた。

 しかし、経済が停滞し、繰延された負債を担う将来世代が減少していく現局面においては、状況が全く異なる。実際、財務省によれば、特例公債の発行から脱却することのできた1990年度以降歳出を原因とする債務残高の増加額416兆円のうち7割強の293兆円が社会保障を原因とするとされている。つまり、日本の財政問題は社会保障問題と言っても過言ではない。増加する一方の社会保障支出を賄うための収入増加策は不可避である。

*社会資本に相当する生産資産は非金融資産に分類され732兆円(うち防衛装備品9兆円)。それとは別に、地下資源、漁場、国有林等の非生産資産(自然資源)153兆円もある。

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