西山隆行が読み解くアメリカ社会

2018年11月8日

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西山隆行 (にしやま・たかゆき)

成蹊大学法学部教授

東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。甲南大学法学部教授を経て現職。専門は比較政治・アメリカ政治。著書に『アメリカ型福祉国家と都市政治』(東京大学出版会)、『移民大国アメリカ』(筑摩書房)、『アメリカ政治』(三修社)、『アメリカ政治入門』(東京大学出版会)、5月に『アメリカ政治講義』(筑摩書房)が刊行予定。

2020年大統領選はどうなる?
大きな困難を抱える両党

 2020年大統領選挙に向けては、二大政党共に、大きな困難を抱えていることが判明した。

 共和党は結局、最後はトランプ頼みであることが明らかになった。今回の選挙でトランプは、大統領選挙と見まがうほどに選挙戦のために全米を飛び回った(ただし、その訪問地は2016年選挙でトランプが勝利した州が中心であり、トランプに対する批判が強い地域はほとんど訪れなかった)。もし、トランプに対する弾劾が開始され、それにトランプが反発を示して自ら辞職するような事態になると、トランプは民主党のみならず共和党批判も展開すると予想される。また、トランプが再選を目指し、それを良しとしない対抗馬が現れた時には、共和党内で泥仕合が展開される可能性もあるだろう。

 また、トランプによって党の性格が変質させられたことが、共和党にとっては大きな痛手になるかもしれない。トランプは民主党に投票する可能性のあった白人労働者階級を共和党支持者に組み込んだ功績があるが、逆に、共和党の中核的支持者であった農家の反発を招いている。トランプは白人労働者階級の支持を確保するためにTPPからの離脱を決定したが、その決定は、日本などへの農作物の輸出を期待していた農家に大きな不利益を与えた。最近、農家の間でのトランプに対する支持率は大幅に低下している。このような状態で2020年大統領選挙を迎えることに、共和党主流派は不安を感じているだろう。

 他方、民主党も前途は明るくない。今回の選挙を経て、民主党内では、穏健派と進歩派(左派)の対立が鮮明になった。今回は反トランプムードの高まりもあり、進歩派の存在感が高まった。それを象徴するのが、民主党下院で第4番目の序列にあった有力者のジョー・クローリーを予備選挙で破った28歳のアレクサンドリア・オカシオ・コルテスだろう。彼女は2016年大統領選挙でバーニー・サンダース陣営で働いた経歴を持ち、民主社会主義者を自称している。このような人物は、選挙区が小さく、同質的な有権者が比較的多い下院の選挙では勝利することができる。だが、その勢いを背景に大統領選挙で進歩派が存在感を増してしまうと、本選挙で穏健な有権者が民主党を支持しなくなる可能性がある。2020年大統領選挙で民主党が勝利するためには、トランプ・ボーターを一定程度取り戻すことが必要になると予想されるが、それを不可能にしてしまう可能性が高いだろう。

 2018年中間選挙は、アメリカ政治を安定させるのではなく、さらなる混乱を生み出す可能性を生み出したのかもしれない。

  
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