2024年4月25日(木)

家電口論

2018年11月23日

パナソニック Wおどり炊き

 個人的に感じているのは、「パナソニックは炊飯という技術を思い通りにコントロールすることができるんだな」ということです。それは内釜材質を極めたとかいうのではなく、炊飯という技術の勘所と、それを盛り込んだプログラムによってです。

 パナソニックは、ご飯食いが揃っている高年齢を第一ターゲットにしているため、標準は、やわらかめに炊きあがるようにしてあります。それは同時に極端ではないですが、若干「べちょ」っと表現されるところがありました。口の中では「ねちょ」っとしたやわらかさです。当然、粒状感も強くは感じられません。

 ところが今回は驚きました。軟らかいのは、それなりに軟らかいのですが、しっかり粒状感が残っているのです。欲しくても、なかなか実現できなかった食感といえます。そしてなぜ私が、「炊飯プログラムの勘所をつかんだ」というと、当モデルに搭載されている「鮮度センシング」の詳しい取材を行ったからです。

 ゲームのような言い方をすると、炊飯と言う技術は、粒状感を残しながら、米の中に水分を入れ、炊くことです。このため、元の米が、どの位の水分を持っているのかというのは、とても重要になります。例えば、新米。米の含水率が最も高い状態です。この時は、少なめの水で炊くというのが常識でした。逆に一夏倉庫で寝かせる(昔だと今ほど暑くはありませんが、エアコンは入っていません)と、水分は減りますから、やや多めということが炊飯のコツでした。

 今、大声で言われないのは、倉庫へのエアコン導入に伴い、含水率の低下をそれなりのレベルに抑えるようになったからです。今度は、家庭を考えてみましょう。昔のお米は冷暗所保管で、さっさと食べたものです。なんせ主食。外食が少ない時代だと、なおさらです。

 ところが、今、飽食の時代。ほとんどの人が、マリー・アントワネットばりに「お米を食べなくても、パンがあるじゃない!」(パンが好きでない人は、別の好きな食べ物を入れて下さい)と豪語しても、おかしくないです。冷蔵庫はパンパンで、冷暗所がなくなった今、生鮮食品の生米を入れるべき冷蔵庫にその余地はありません。しかも部屋の中は高密閉。夏場など、エアコンを切ると何度まで上がるか分かりません。つまり、米を放置すると水分が抜け、劣化するわけです。

 パナソニックは、「この扱いが悪い米でも美味しく食べられないのか」ということを考えました。その答えが「鮮度センシング」機能です。しかし、米の破壊検査をしない限り、米の含水率など分かりませんからね。どうやって鮮度を感知しているかというと、炊飯のマスタープログラムとのズレを検知するそうです。これはビックリしました。そこまで正確にコントロールできるんだと思いました。

 そしてそれに欠かせないのが、高圧技術です。高圧というのは、ある意味、強引に水分を押し込むわけですが、急性なところもあるわけです。圧力鍋でもそうですが、味のしみ込みはゆっくりです。今回の「Wおどり炊き」は、水分と味のバランスが良いのです。

パナソニック「Wおどり炊き」

 これに加えて「旨み熟成浸水」。これは前炊きを45〜55℃に保つことで、アミノ酸(旨み成分)を増やします。もう、炊飯「自由自在」と言った面持ちです。

「矢印」はスチームを作るための水入れ

 しかも今回は「スチーム」機能をプラスしています。湿度コントロールと言ってもいいでしょうね。ご飯表面を適正な湿度に保ちます。いたせりつくせりで、ここまでくると「科学の勝利」と言いたくなるくらいです。「Wおどり炊き」は食感軸の「しゃっきり」「もちもち」、かたさ軸の「かため」「やわらかめ」で、自分の好みに合わせることができる様になっていますが、標準でも素晴らしい出来と言えます。

 しかも、2018年モデルはデザインがいいです。すっぱりと日本刀で横に斬ったような、ビシっとしたデザインは、いいです。

炊飯器は最も安い贅沢品!?

 お米というモノは妙なものです。いろいろな炊き方がありますが、基本、それなりに食べられるように炊きあがります。主食だからという言い方もでできますが、だからこそ主食になったのかも知れないなぁとも思います。

 そんなお米をより「美味しく炊く」。美味しいという曖昧な目標に対して、よくぞという程、アプローチしているのが高級炊飯器と言われるゾーンです。目標は同じなのに、アプローチは天と地ほどに違います。しかし、この3社、よくぞここまで、と言えるできです。

 確かに、高級炊飯器は安くはありません。それでも、値段もこなれて来ています。お金を出し、毎日美味しく食べ、力強く暮らすのはいいと思います。まず炊飯器の催しモノも多い、新米の秋。皆さんも最新の技術で味わってみませんか?

  
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