2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2018年11月17日

これからは発災前からの対応が「カギ」

 この教訓をもとにわが国でも取り組みが始まり、例えば今年の台風21号が関西圏に上陸することを見越して、JR西日本が前日から明日の午前11時までに列車を停めると発表し、大手百貨店なども軒並み休業を決め、企業や工場もそれに倣い、自宅待機などを呼びかけた。これまでの発災してからの運休対応ではなく、災害は起こるものとして前向きに取り組み、「空振りを恐れずに」安全な運行にならないならば計画運休を進めた結果だった。これは「攻めの防災」というもので、あらかじめ想定されるリスクを評価して、そのリスクを時系列で整理して対応したものだった。

 避難勧告から避難完了までのリードタイムが十分にない状況では被害をゼロにすることができないため、被害を最小化するための現実的で可能な対応を見つけ出し、また事業者が早期に操業再開できるための減災対策を支援していくことが求められたためだった。災害がピークになる前の何時には避難完了していなければならないから、逆算して、そのための必要な時間に避難開始する、そのためにはどんな段階で避難指示しなければいけないかなど、いわば未来から発想して取り組みを進めていったのだった。

 同じ考え方で、災害が起きたときには、福祉避難所が必要であり、もしも要配慮者がそこに入りきれない心配があるのだったら、一般の避難所でも対応できるように福祉避難室を確保するとか、施設の指定そのものを増やすなど、未来発想の具体的な取り組みが必要となる。また、避難訓練のように指示で動くのではなく、自分たちのルールを話し合い、他の地域で起こっていることを対岸の火と思わずに「他での事例を参考に」想像力を発揮して、対処を自分たちで行えるようにしておく「備え」が有効だ。

タイムライン防災が必要な理由

 従来の地域防災計画等では、「何を」は明記されていても、「誰が」「いつ」に係る具体的な記述がなく、災害の発生規模・範囲に応じて防災体制を構築するように定められているため、事態が発生してから「いつ」「どこで」「どのような」事態になっているか状況を把握する必要があるため、近年発生していない大災害に対しては経験がないために、重大な事態に対する具体的な防災対応を想定することが難しい。事態を把握してからの対応では、対症療法的な対応となり、要員・部隊の派遣や資機材の配備が不十分となる。

タイムラインを策定することで、

  1. 事態の推移に応じた的確な対応
  2. 関係主体が相互に連携した対応
  3. 災害発生の前の段階における早めの対応(遅れない対応)による被害の最小化(被害規模の軽減、早期の回復)が期待される。

防災を軸とした地域のコミュニティの再生へ

 もうひとつは災害時に頼りとなる公助・共助・自助のなかで、平時から顔と顔の見える関係にあることが最も大切だ。しかしながら国内はどこでも人口減少によって地域が分断して、コミュニティそのものが喪失しているのでそうした関係がなくなっているという声を聴く。ただ、発想を変えて、だからこそ、減災を軸とした地域のコミュニティの再生を目指していくことはできないだろうか。

 対馬のワークショップの後、当日来られていた参加者を中心として、話し合いの場を今後も持ち、連絡協議会のような形で作っていきたいという意見が出された。顔の見える関係を普段から築くことで、災害が発生しても誰一人として取り残さない地域ができるようになる。それ自体が地域資源ともいえる。小さな地域だからこそ思い切った取り組みができ、トップランナーとして走ることができる。対馬の取り組みに一光の希望をみた思いがした。

  
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