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2018年11月20日

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日産自動車は19日、代表取締役会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)が金銭をめぐる不正行為を行ったとして、東京地検特捜部が金融商品取引法違反容疑で逮捕したと発表した。

ゴーン容疑者は仏ルノーや三菱自動車の会長等も兼任し、自動車業界の第一人者とされる。日産の西川広人社長は、22日に招集する取締役会議でゴーン容疑者を同社の会長職から解任する方針と説明した。

ゴーン容疑者は、報酬を実際よりも少なく有価証券報告書に記載したことや、日産の資産を私的に使用したことなど、「重大な不正行為」で非難されている。

日産は、容疑の詳細については明らかにできないとしている。東京地検も、ゴーン容疑者の逮捕については声明を出していない。

日産は世界第6位の自動車メーカーで、英国イングランド北部サンダーランドに自動車工場として国内最大となる製造工場を構えている。

西川社長は19日夜に行った記者会見で、強い憤りと落胆を感じていると吐露した。

「いずれ詳細が明らかになるにつれて、今私が感じているようなものが従業員の中にも広がっていくのではないかと思っております」

その上で、従業員と関係者のためにも「社内の動揺を安定化させ、日常業務の面で(中略)影響を極力出さないよう集中してまいりたい」と語った。

日産はプレスリリースで、内部通報を受け、数カ月間にわたり内部調査を行ってきたと説明した。

日本のメディアは確定情報ではないながらも、ゴーン容疑者は2011年からの5年間にわたり、報酬計50億円を過小に報告していたと伝えている。

ゴーン容疑者の昨年度の報酬は日産から7億3500万円、三菱自動車から2億2700万円、ルノーから740万ユーロ(約9億5000万円)で、合わせて約19億1200万円だった。

西川社長は、不正行為は「長きにわたって行われていた」と認識していると話した。

日本では2010年から、1億円以上の報酬を受け取る役員の名前や報酬額の個別開示が義務付けられている。


カルロス・ゴーン容疑者とは

  • ゴーン容疑者の英雄的な立場は大きく、日本ではその半生が漫画化された
  • ブラジル生まれだがレバノンにルーツを持ち、フランス国民。ゴーン容疑者は以前、こうした生い立ちが人とは違うと感じる原因となり、新しい文化を受け入れる助けになったと語っている
  • フランスでは、ルノーの復興で厳しいコスト削減策を遂行し、「コスト・キラー」の名前で知られる
  • レバノンの大統領候補と目されたこともあったが、ゴーン容疑者自身はすでに「たくさんの職務についている」としてこれを否定した
  • 2011年に日本で行われた、首相になってもらいたい人物の世論調査では、9位のバラク・オバマ前米大統領を抑えて7位を獲得した

日産は、これまで検察当局に情報を提供するとともに、当局の捜査に全面的に協力しており、引き続き今後も協力すると説明した。

併せて、ゴーン容疑者と共に逮捕された代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)も不正行為に「深く関与していた」として、解任を求める予定だ。

西川社長は、ケリー容疑者はゴーン容疑者の側近としての影響力が大きかったと語った。

三菱自動車とルノーの対応は?

三菱自動車はこの日にプレスリリースで、ゴーン容疑者の会長及び代表取締役職の解任を求めると発表した。

「弊社(ゴーン)取締役会長が逮捕されたことを受けて、容疑の内容がコーポレートガバナンス及びコンプライアンスに関するものであることも踏まえ、カルロス・ゴーンの会長及び代表取締役の職を速やかに解くことを取締役会に提案することと致しました」

ゴーン容疑者は、ルノー・日産・三菱アライアンスの代表も務めていた。ゴーン容疑者逮捕を受け、ルノーの株価は10%近く下落した。

ルノーは、「速やかに」取締役会を招集するとしている。

ルノーのフィリップ・ラガイエット取締役は、同社はゴーン容疑者からの「正確な情報」を待っていると述べ、日産および三菱とのアライアンスにおける「ルノーの利益の保護」に貢献していくと話した。

日産の西川社長は、ゴーン容疑者に権力が集中しすぎたため、透明性が低かったと問題を指摘。

「ガバナンスの問題が大きい。(中略)ふり返ると、2005年に(ゴーン容疑者が)ルノーと日産のCEOを兼務することになった時に(中略)その結果として将来的に何が起きるのかということをあまり議論しませんでした」と話した。

「最大限に注意を払う」

ルノーは日産の株式43.4%を保有しているが、そのルノーはフランス政府が15%を所持している。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ルノー自体と日産とのアライアンスの安定性を守るためにフランス政府も動いていくと話した。

「株主として(中略)アライアンスとルノー・グループ、そしてフランス政府から十全の支援を受ける従業員の安定性について、政府は引き続き最大限に注意を払っていく」

ゴーン容疑者は20年近くにわたり、自動車業界の巨人としての地位にあった。2000年代前半には、倒産寸前だった日産の劇的な再建の立役者となった。

1990年代にはルノーで人員削減や工場閉鎖を行い、「コスト・キラー」の異名を付けられたが、この戦略が成功して評価を確実なものにした。

ゴーン容疑者のキャリアはフランスのタイヤ大手ミシュランで始まり、その後ルノーに移動。1999年にルノーが日産の最大株主となった際に日産に参画し、2001年から2017年まで社長を務めた。

ルノーは数カ月前に、ゴーン容疑者に対する昨年分の役員報酬740万ユーロを株主総会で僅差で決定したばかりだった。


<分析> ――テオ・レゲット、ビジネス担当編集委員

カルロス・ゴーンは自動車業界の第一人者だ。ルノーと日産の業績回復を支え、両社のアライアンスの要となった。

この日仏の同盟には現在は三菱自動車も加わり、世界最大級の自動車メーカーとなっている。

問題は、今何がおきているのかということだ。ゴーン氏はすでにいくつかの責任ある職務から離れている。昨年には日産の社長職を退き、最近ではルノーでも、日常業務の一部から離れていた。

一方で、向こう数年はルノーの最高経営責任者(CEO)にとどまり、アライアンスの代表も務める予定だった。

今回の発表で、この戦略は壊れてしまったようだ。ルノーの対応はまだ明らかになっていない。

しかし、順当な取締役交代計画や、やや扱いづらいルノー・日産・三菱アライアンスの構造全体の未来は、大きく開かれたと言ってもいいだろう。


(英語記事 Nissan boss arrested over 'misconduct'

提供元:https://www.bbc.com/japanese/46271158

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