世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年11月27日

»著者プロフィール

 中国は太平洋の島嶼国に対し、2011年から18年にかけて合計12億ドル以上の支援をしており、今や同地域にとり、豪州に次ぐ第二の援助国である。同地域は中国にとり、(1)アジアと中南米方面との間のシーレーンに位置する、(2)小笠原~グアム~パプアニューギニアを結ぶ「第2列島線」の南端およびその周辺に位置する、(3)台湾との国交を維持している国が多い、といった戦略的重要性を有する。第2列島線は、台湾有事の際に、米軍の来援を阻止するラインとして、中国が設定していると考えられているものである。一方、豪州は伝統的に、南太平洋島嶼国を「裏庭」とみなしてきた。中国の進出は、「太平洋版真珠の首飾り」とでも言うべき状況になり得る。

 王毅外相の上記発言は、南太平洋島嶼国に対する支援において中国と豪州が協力を模索することを示唆している。仮に協力できれば、協力を通じて、「債務の罠」などの懸念が高まる中国の支援を国際水準に合致したものに誘導できる可能性が出てくるかもしれない。しかし、ペイン外相は会見で、島嶼国をめぐる協力については何も言っていない。抽象的に協力につき合意したにとどまるということだろう。外相会談の当日にモリソン首相が最大30億ドルに上る「南太平洋インフラ基金」を打ち上げたことが、豪州側の姿勢を象徴しているように思われる。同基金は、インフラ融資15億ドル、輸出金融機関向けの約7億ドルの資本などで構成され、通信、エネルギー、輸送、水などに関する重要プロジェクトが優先されるという。

 ロイター通信によれば、6月に中国がパプアニューギニア北部沖合に位置するマヌス島の港湾整備に資金援助をする可能性が持ち上がったが、これに対し豪政府は同港湾整備への資金協力を発表して対抗した。モリソン首相は、豪軍兵士への演説で、太平洋島嶼国を「縄張り」と明言し、「豪州は、太平洋南西部の戦略的安全、経済的安定、政治的独立に関心を持ち続ける」と述べている。

 11月16日に豪州で行われた日豪首脳会談では、「両首脳は、太平洋の経済的及び社会的な強靭性、安定性及び繁栄を支えるための、太平洋島嶼国との協働における日豪の緊密な協力の重要性を強調した。両首脳は、日本のPALM(太平洋・島サミット)プロセスと豪州のこの地域に関する『ステップ・アップ』政策に関するものを含む、太平洋における協力を強化することにコミットした」(共同プレス声明より)。王毅外相は中豪協力について示唆したが、中国が一帯一路の一環として太平洋島嶼国への関与を強めようとし、日米豪が「インド太平洋」の枠組みでこれに対抗しようとする構図に大きな変化はない。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

 

関連記事

新着記事

»もっと見る