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2018年11月21日

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米上院外交委員会の共和党および民主党両党指導部は20日、サウジアラビア人記者のジャマル・カショジ氏殺害をめぐり、2度目の調査を行うよう求める書簡をドナルド・トランプ米大統領に送付した。

書簡は、サウジアラビアの実質的支配者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子がこの事件に関与していたかを確認するよう求めている。

サウジ政府の批判者として知られたカショジ記者は、結婚に向けた書類入手のため10月2日にトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館に入った後、殺害された。

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大統領はこの日、カショジ氏殺害をめぐるサウジアラビアへの国際的な非難にも関わらず、同国とのつながりを強く擁護した。

声明文の中でトランプ氏、「(ムハンマド)皇太子はこの悲劇的な出来事について知っていた可能性は非常に高い。やったのかもしれないしそうでないのかもしれない!」と述べた。

また20日夜には、CIAがカショジ氏殺害について「100%」断定したわけではないと話した。

この声明を受けて、共和党のボブ・コーカー上院議員と民主党のボブ・メネンデス上院議員は、上院の外交委員会を代表して共同声明を発表。

共同声明では、2度目の調査ではムハンマド皇太子に特に集中し、「この人物が超法規的な殺人や拷問、重大な人権侵害に対する責任があるかを確認する」ようトランプ氏に求めた。

この要請は、人権侵害を引き起こした当局者に対する制裁を定めたグローバル・マグニツキー法の下で行われており、米政権は120日以内に回答するこ義務がある。

米ABCニュースのコナー・フィネガン記者はツイッターに、書簡の画像とともに「新情報。ボブ・コーカー上院議員とボブ・メネンデス上院議員、上院外交委員会の共和党と民主党トップが、トランプ政権による制裁関連の2度目の調査を求めた。特に、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子がカショジ氏殺害を指示したのか明らかにするよう求めている。『我々は120日以内にあなたの判断を受領する予定だ』という」と投稿した。

https://twitter.com/cjf39/status/1065027433726906368


サウジアラビアは、殺害が一部の当局者による「勝手な計画」の結果起きたものだと発表する一方、ムハンマド皇太子が事前に承知していた事実はないと主張している。

一方で米メディアによると、米中央情報局(CIA)はムハンマド皇太子が殺害を命令したとみている

18日に行われたフォックス・ニュースの取材でトランプ氏は、トルコ側から提供された殺害を記録した音声を「苦痛のテープだ」と説明し、自分自身は聞くつもりがないと表明した

トランプ氏の声明の内容

トランプ氏は声明で「世界はとても危険な場所だ!」と述べ、サウジアラビアはイランに対抗するための米国の同盟国だと持ち上げた。

声明にはサウジは「イスラム過激派テロリズムとの戦いを主導するために何十億ドルも投じている」一方、イランは「たくさんのアメリカ人や無実の人々を中東全域で殺している」と書かれている。


トランプ大統領はさらに、サウジによる投資と兵器購入のメリットを強調し、「愚かにもこうした契約を破棄すれば、ロシアと中国が大きな利益を得るだろう」としている。

トランプ氏は声明でカショジ氏殺害については「ひどい」出来事だと認めた一方、同氏の死について「全ての事実を知ることはないかもしれない」と書いた。

「米国やイスラエル、(中東)地域の他の友好国の利益を守るために、米国はサウジアラビアと揺るぎないパートナーであり続ける」と米大統領は強調した。

トランプ氏はその後、アルゼンチンで11月30日から開催される主要20カ国首脳会議(G20)にムハンマド皇太子が出席するならば、そこで会談する予定だと話した。

マイク・ポンペオ国務長官は大統領の意見を支持。「卑劣な悪意のある世界が向こうに広がっている」と述べ、トランプ氏には「アメリカの国家安全保障を促進する政策を採用する義務がある」と話した。

ポンペオ長官はこの日、トルコのメヴリュット・チャヴシュオール外相と会談した。チャヴシュオール外相は、カショジ氏殺害についてサウジアラビアと協力しているが「我々の望む状態になっていない」と話した。

これに対し民主党のダイアン・ファインスタイン上院議員は、大統領がカショジ氏の「計画殺人」についてムハンマド皇太子を罰しないことにショックを覚えたと声明を発表した。

また、共和党のリンジー・グレアム上院議員はツイッターで、「あらゆる文明の規範に逆らったこの蛮行をめぐり、王室のしかるべきメンバーを含めサウジアラビアに厳しい制裁を科すことについて、超党派の強力な支持が得られると確信している」と述べた。

https://twitter.com/LindseyGrahamSC/status/1065000323004145664


声明に対する他国の反応は?

BBCのジョナサン・マーカス外交担当編集委員によると、この声明が中東やその他の地域でどのように受け止められるかは深刻な問題だという。

米国の中東政策はサウジのムハンマド皇太子とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相という2人の重要人物と緊密に連携しているだけに、米国が独立した仲裁役を果たせるのか見通しが難しくなっているという。

トランプ大統領の偏狭で利益優先の姿勢は、西側の友好国を落胆させ、すでに「ロシア第一」や「中国第一」の姿勢で国際問題に臨む両国内の勢力を勢いづけてしまうだろうと、マーカス編集委員は指摘する。

イランのジャヴァド・ザリフ外相はトランプ氏の声明に不快感を示し、ツイッターで「トランプ氏がサウジの残虐行為に関する声明文の最初の段落で、思いつく限りの悪事はイランのせいだとまずはイランを批判したのは異様だ。もしかしたらカリフォルニアの山火事も我々の責任かもしれない。フィンランド人のように、熊手で森の落ち葉かきを手伝わなかったから?」と揶揄(やゆ)した。

トランプ米大統領が18日、カリフォルニア州で発生している大規模な山火事をめぐり、熊手で落ち葉かきをすることで国土の大半を占める森林を管理しているとフィンランドを称賛したが、フィンランド国内では戸惑いの声が広がっている。

https://twitter.com/JZarif/status/1064951977174581249



<分析>この暗い影は今後何年も続く――リース・ドゥーセットBBC外交担当編集主任(リヤド)

サウジアラビアの人たち、特にサウジの政府高官は、安堵のため息をついているだろう。しかしこれは、サウジ政府にとって想定内の展開だろる。トランプ大統領は王国の真の友人だと、サウジ政府は言い続けてきた。

サウジアラビアと米国は共に、この大きな危機と世界的な非難を収束させたいと思っている。しかしトランプ氏が認め、サウジ国民が知っているように、そう簡単にはいかない。多くの米連邦議員など大勢にとってそうは簡単に終わらないし、より明確な答えを求める国々にとっても同様だ。

多くのサウジ国民は、サウジアラビアを実質的に支配するムハンマド・ビン・サルマン皇太子がこのような卑劣な行為を命令したとは信じていないと話す。国の前進をかねてから望んでいた大勢は、この衝撃的な殺人におののくと同時に、この事件が今後何年にもわたり長い影を落とすのではないかと残念に思っている。

サウジの著名人物の中には、「この事件でサウジアラビアは10歩後退した」と語る人もいる。


<分析>アメリカ第一主義の本質――アンソニー・ザーカー、BBC北米上級記者、ワシントン

トランプ氏は今までにないタイプの大統領だ。びっくりマークを使っていることも含めそれが顕著に表れるのは外交政策だ。ジャマル・カショジ記者の死に関する大統領の発表は、その不作法な言葉遣いだけでなく、さまざまな意味で特筆に価するものだった。

トランプ大統領はすぐに話題をイランに変えようとした。サウジのムハンマド皇太子が殺害を指示したとの報道を、「そうかもしれないしそうじゃないかもしれない」と肩をすくめるように否定した。サウジによる4500億ドルの投資と兵器購入の経済効果を指摘したが、そのほとんどは単に紙の上での約束に過ぎない。

最も耳障りなのは、サウジ国民がムスリム同胞団とのつながりがあったカショジ氏を「国家の敵」と見ていたという、のんきな意見だったかもしれない。

トランプ氏の声明は、自らの「アメリカ第一主義」的な世界観の本質をあぶりだしたものだ。倫理観と世界的なリーダーシップよりも、米国の経済的・軍事的安全保障につながると自分が考えるものを優先させたのだ。


(英語記事 Trump backs Saudi Arabia despite murder

提供元:https://www.bbc.com/japanese/46285034

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