WEDGE REPORT

2018年11月24日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

産經新聞元論説委員長

産經新聞元論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員などを経て、2015年6月から産経新聞社監査役。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

しびれ切らした日本の〝自壊〟

 こうした工作活動もさることながら、2島返還論は、むしろしびれを切らした日本の〝自壊〟だとする見方もある。

 2島返還論は2000年代初め、日本の一部有力政治家が主張、少数の外務省幹部らが呼応して徐々に日本国内に浸透しはじめた。困難な4島返還より、2島先行返還を実現し、残り2島の交渉を継続するという現実的な考え方だった。政府は一貫して4島返還の立場を主張してきたが、2島返還論は時々の情勢に応じて、浮上したり、消えたりを繰り返してきた。

 ほかの有力政治家のなかから、これに触発されたかのように4島全体の面積を2等分することで国境線を画定するなどといった妥協的なプランが公言されたりしたのも不可解だった。

 最近では、2018年10月、臨時国会の衆院代表質問で、国民民主党の玉木雄一郎代表が、「56年の共同宣言を土台にしながら、2島の先行返還を4島返還の突破口とすることも選択肢ではないか」と安倍首相に迫った。首相は「4島の帰属問題を解決して平和条約を締結するというのが一貫した立場」と従来の紋切り型の答弁をするにとどめたが、責任ある野党党首が堂々と2島返還を主張した事には驚いた。

 注意しなければならないのは、国民の間でも、2島返還を支持する意見が少なからず存在することだ。

 産経新聞とFNNがシンガポール会談直後の11月17、18両日行った世論調査によると、共同宣言基礎に交渉加速―という会談結果を評価する人は64・5%にのぼり、しない人は27・3%にとどまった。「4島返還を求めるべき」は61・6%だったが、「こだわらない」という人も35・9%にのぼった。ほくそ笑むプーチン大統領の表情が目に浮かぶようだ。

100年後に禍根残すな

 2島返還に舵を切ったといわれる安倍首相の胸の内について、さまざまな憶測がなされている。残り3年の任期中に〝遺産〟を残しておきたいのではないか、父の故安倍晋太郎外相が同じ考えであったことから遺志を実現しようとしているのだ、来年、衆参同日選挙を画策、そのための材料にする目論見だーなどがそれだ。政治家の胸の内など、とうてい想像の及ぶところではないが、100年後まで禍根を残すことのないような解決を望みたい。

 繰り返すが、不法占拠をしている相手との「引き分け」などあり得ない。日本の完全勝利でなければならない。 

  
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