立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2018年11月26日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

4つの中国人グループ

 まず第1グループは、国家案件の大元締め組織や関係者。それこそ政府間の協定や大手国有企業の関与を中心とするものがほとんどで、アフリカ現地にやってくる中国人も官僚や国有企業の経営者やエリート管理職たちばかりだ。彼らはビジネスクラスや高級車に乗り、案件現場の視察やキーパーソン会談を主な仕事としているだけに、現地における実務的な関与は大変薄い。手を汚さない人たちだ。

 次に第2グループ。上記のような国家級の案件の大元締めは国有企業であっても、一部あるいはすべての実務は下請けとして民間企業に投げる。談合などあるかどうかは知らないが、一応入札などの形態によって案件や特定業務を競り落とした民間企業は現地に乗り込んで案件の実施に取り掛かる。

 その際は社内で後進地域業務のハードシップ手当を付けて幹部や社員の有志を募集する。そうした会社が多いようだ。特に新卒や若手社員にとってみれば、アフリカ駐在は蓄財と出世の早道となるため、手を挙げる人も多い。たとえば、新卒入社して数年も経たない人間なら、ハードシップ手当込の給料は月1万元(約16万円)をもらえ、さらに現地での社宅や食事その他生活費全般を会社が負担した場合、給料は丸々貯金に回せる。数年間のアフリカ駐在と物価の高い中国の大都市でサラリーマンをやるのと、銀行通帳の残高はゼロがいくつも違ってくるだろう。

 アフリカ案件は元請け、下請け、孫請けへと広がっていくと、進出中国企業のネットワークが形成される。一般論的には、末端へ行けばいくほど請負条件が厳しいものとなり、請負人やその労働者がより厳しい条件を受け入れ仕事に取り掛からなければならない。

 さらに第3グループ。上記の案件推進に伴い、労働集約型の部分はどう処理するかというと、日本企業なら現地人ワーカーを募集・調達するが、中国企業の場合、中国人労働者を労務派遣として輸出するのが一般的だ。現地雇用による言語の問題や研修訓練、人材流出などの問題を回避しつつも、総合的に労務管理コストを削減する。

 アフリカの場合、現地労働者は怠惰な者が多く、貯蓄志向も薄いため、月給をもらった時点ですぐに会社を辞めて消費に走るわけだが、中国人労働者はそうはいかない。勤勉性もさておきながら、彼たちは業者にデポジットたる保証金を差し入れて海外出稼ぎにやってきた以上、途中で抜けられないし、抜けられたとしても保証金が没収される羽目になり大損する。任期が半分来たら保証金の半分が戻り、任期を全うした時点で全額返還されるように、うまく計算されているのだ。労働条件も楽ではない。アフリカ現地では中国人労働者には実質的に労働法の保護も何もない。月間勤務30日、毎日勤務10時間といったケースも決して珍しくない。

 最後に第4グループ。現地起業者の中国人たちである。業種的にはまず貿易商人。多くのアフリカ諸国では物資不足が深刻な状態にある。というのも、そもそもこれらの国には製造業らしい製造業がほとんど存在しないからだ。シャンプーやリンスから、パソコンの接続コードまで海外からの輸入に頼っている。そこで活躍するのは中国人の貿易商人である。中国で10元で仕入れた商材ならアフリカ現地に持っていくと80元で卸し、それが100元で末端販売されている。そういう場面も多々ある。

 中国人・企業同士の競争を避け、価格相場を維持するためにも、ある種の「調整メカニズム」がうまく作動している可能性も否定できないだろう。

 このような現地ビジネスに取り掛かり、現地在住や出張者の中国人の生活をサポートするサービス業もほぼすべて中国人によって完結される。レストランもホテルも中国人客は中国人経営の施設を利用する。食材も現地で手に入らない野菜なら、中国人が田んぼを確保して自ら農業経営によって収穫し、中国人が運営する流通に乗せる。たとえば豆腐なら、中国人のための中国系豆腐製作業者まで存在するほどだ。

 ある意味でアフリカの中には、すでに完全な中国人社会が出来上がっているのだ。

後編へ続く>

連載:立花聡の「世界ビジネス見聞録」

  
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