立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2018年11月27日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

官民一体のヒエラルキー中国人社会

 前編にも述べたように、アフリカに進出する中国企業・中国人は4つのグループに分類できる。

 おさらいすると、第1グループは政府や大手国有企業、つまりスーパーアッパークラスとなる「官」である。第2グループは「民」のアッパークラス、あるいはミドルクラスとなるが、第3グループはもっとも地位が低く、労務輸出対象となる単純労働者で「ロアクラス」に当たる。そして第4グループは自営業者やオーナー系零細企業中心でこれもアッパーからミドルまで網羅している層である。

 官民一体のうえ、全クラスがそれぞれの役割分担を明確に引き受けている。そもそも、中国社会それ自体もヒエラルキー社会であるから、違和感なくそのままの構造をアフリカという進出先に複製や移植しているだけではないかと。たった1つの相違点があるとすれば、それはアフリカにおいてより緊密な官民一体感が見られることだ。

日本企業がなぜ勝てないか、構造的異質性

 中国という社会全体的なヒエラルキー構造に対して、日本社会は均質的なフラット社会である。全階級を総動員して海外進出するなど、あり得ない話だ。そして組織の最小単位も異なる。日本の場合は基本的に企業単位だが、中国は個人や家族単位が最小単位となるため、非常に動きやすい。つまり日本の組織よりはるかに機動性に富んでいるのである。

 そのうえ、意思決定の構造も全く異なる。中国企業は独裁性が強く、意思決定のスピードも速い。情報収集や処理の不十分からもたらされるリスクはあるものの、それも後続の試行錯誤によって速やかに軌道を修正していく。しかし日本の組織はまず責任所在の問題がプライオリティーとなり、潔癖的にすべてのリスクを排除しようとするから、時期や機会をどんどん逃してしまっている。

 中国式の組織は概ね戦略といった大枠づくりに強いが、ディテールに弱い。これと反対に日本的組織は細部にこだわりすぎて、ついつい全局観や俯瞰的目線を喪失する。フロンティアへのアプローチという段階までくると、中国式の組織に有利であることは言うまでもない。たとえ失敗しても敗者が淘汰され、また次の挑戦者に取って代わられるだけで困ることはない。しかし、日本的組織にとって、失敗は許されないから、最初から失敗してしまうのである。

「落地生根」と「落葉帰根」

 メンタル面の相違も大きい。特にアフリカでは二流以下で無名な中国企業や個人で裸一貫からのスタートが多く、退路を断ってのアフリカ進出になれば前進するのみ。その生命力、サバイバル力は凄まじい。日本人の場合、事業が失敗すれば「撤退」や「帰国」といった選択肢が常に用意されているから、メンタル的なぜい弱性がどうしても目立ってしまう。

 中国語で「落地生根」と「落葉帰根」という2つの熟語がある。前者とは祖国や故郷から遠く離れた地に根を下して、異国を本拠地として強く生きていくこと、後者とはどんなに地上高い樹の葉でも、いずれは地に落ち根に帰ること、つまり人は最期、遺骨だけでも故郷へ帰ることを意味する。

 こうして、アフリカでは、日本企業はそもそも中国人に太刀打ちできるはずがないのである。

連載:立花聡の「世界ビジネス見聞録」

  
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