Washington Files

2018年11月26日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

(iStock.com/flySnow/Purestock)

 トランプ政権の看板スローガン「米国第一主義」と表裏一体で進められた大幅減税。しかしその結果、財政赤字が深刻化、このままでは自ら再選を目指す2年後の大統領選で国民の批判にさらされることを恐れる大統領は、早々と来年10月に向けて2020年度予算の切り詰めを全省庁に言い渡した。この中には、聖域扱いされてきた軍事予算も含まれており、ペンタゴンをあわてさせている。

 「全省庁例外なしに、予算カットを覚悟してほしい」―トランプ大統領は去る10月16日、ホワイトハウスでの閣議で次のようにまくしたてた。

富裕層減税が、国防費カットの結果に……。写真は、21日に香港に寄港した空母ロナルド・レーガンの乗組員(Imaginechina/AFLO)

 「2020年度予算だが、本日出席の閣僚たちには最低でも5%はカットをお願いしたい。いやもっとやってもらいたい。そうすればみんながハッピーになれる。各省庁の脂肪部分や無駄を除去すべきだ。私はあなたたち全員がこれを達成できることを信じている。努力すれば(財政赤字削減の)インパクトはとてつもなく大きい……」

 この異例の要請は、たまたまその2日前の14日、ホワイトハウスが公表した「米国財政見通し」を受けたもので、それによると、本年度財政赤字は2012年以来、最悪の7790億ドル(約80兆円)を記録、さらに2019年度には1兆ドルを突破した後、その後も同レベルの苦しい状況が続くと見込まれている。

 これとは対照的に、トランプ氏が頭ごなしに批判を続けてきたオバマ前政権下では、とくに2期目の在任期間中に着実に財政赤字が減り始め、ブッシュ政権当時の1兆3000億ドルからトランプ政権発足前の2016年会計年度では5850億ドルと5割以上の顕著な減少となった。

 ところが、「小さな政府」を標榜したはずのトランプ政権下で、2019年にはオバマ政権時の倍近い赤字にまで再び膨れ上がって来ることが明らかになり、大統領の尻に火がついた格好だ。

 赤字増の最大要因とされているのが昨年10月以来、実施されてきた大幅減税による税収減であり、しかもその減税効果が富裕層優先で、中産階級には及んでいないことから批判が高まった結果、11月中間選挙では下院で共和党が敗北するなど、国民の手痛いしっぺ返しを受けていた。

 予算カット要求をいきなり突き付けられた各省庁の中で、最も注目されるのが国防・軍事関係であることはいうまでもない。

 この点に関して大統領は詳細には触れず、閣議後の記者団とのやりとりの中で「おそらく(2020年国防関係予算は)7000億ドルぐらいだろう。軍事関係でやるべきことはすでにやっているからだ」と述べた。

 2018年度の国防関係予算は7000億ドルだったが、10月からスタートしたばかりの2019年度予算では7160億ドルにまで引き上げられることになっている。しかし今回の大統領指示により2020年には再び7000億ドルに戻ることになり、結果として5%ではなく、2.23%の削減にとどまるという。

 この間の事情について大統領は「つい少し前までは5200億ドルだったが、私が大統領になって7000億ドルに、そして7160億ドルに増額し、新型艦船の建造にあてた。わが国は眼を見張るような新世代潜水艦を造りだしている。それでも2020年度は自分としては7000億ドルに抑えるつもりだ」と説明した。

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