家電の航路

2011年8月23日

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前田 悟 (まえだ・さとる)

金沢工業大学客員教授

(株)SOW他複数企業特別顧問。1951年岡山県生まれ。ソニーで、世界初の無線TVエアボード、ロケーションフリーTVなどを開発。07年にケンウッドに移籍し、2008年JVC KENWOOD Holdings㈱執行役員常務に就任、2011年6月退任まで技術戦略、新規商品開発を担当する。2010年7月から、金沢工業大学客員教授、現在は複数企業の特別顧問も行っている。

 現在の日本の家電メーカーは、商品企画の重要性が浸透していない。私が尊敬してやまない、ソニー創業者の井深大さん、盛田昭夫さん、創業者に近い大賀典雄さんには、常に「他社がやらない世の中にないものをやれ」と言われてきた。このような雰囲気のもと、時間があれば勝手にそれまでに考えていたアイデアを具現化したり、新しいアイデアを出すことを考えたりしてきた(商品企画の重要性に理解があったからこそ、こうした取り組みができる雰囲気があった)。これは経験していなければできないため、いかに若い人にこうした経験をさせるかというマネージメントが必要になる。

 日本のTVメーカーは、価格競争激化から、自社工場から台湾資本の大手EMS(電子機器の受託生産)企業に生産を移すところが増えているが、これでは価格競争から免れない。PCと同様に、TVも大手家電メーカーが企画・仕様だけを行い、EMSが開発・設計・生産までを担うというビジネス形態になっている。しかし、同じ仕様であれば家電メーカーが絡む必要はない。現に量販店も独自ブランド(PB)でEMSから調達したり、EMS企業が自らのブランドで販売したりしている。しかも、大手家電メーカーが規模の論理で数を発注すればするほど、EMSやPBを扱う量販店、新興企業はその部品の大量発注による部品コスト削減の恩恵を受けるということになる。

ハード、ソフトではなく
企画を考えるべき

 大手家電メーカーがそれを覆すカギは、新規参入のEMSや量販店には真似することのできない新しい商品、フォローではないサービスの企画ができるかである。それに基づいた特徴のあるネット機能の使い方や、コア技術としてのソフト、ハードウェアがあるかどうかである。だが、ネット機能に関しては、新興TVメーカーである米・VIZIOの方が良い機能として受け入れられていると聞く。一方、日本企業はGoogle TVも含めて従来からのVOD(Video On Demand)の域を出ていない。ネットに繋いではじめて経験できる新しいTVの姿というのはVOD以外にあると思うが……。

 新TVにはLSI、ソフトも必要だ。しかし、EMSに丸投げでどこにでもあるLSI、ソフトで作られたTVであり、結局、価格競争に陥っている。よく日本はソフトが弱いとの話が出てくるが、ハードも弱く、LSIすら台湾メーカーのものが主流になっている。そもそも、ソフトやハードは手法にすぎず、差異化できる提案(商品企画)をする前提が重要である。

 あえて日本メーカーのソフトが弱いと言うならば、それはサービスを含めたビジネスモデルが弱いということは言える。特にネットに関してこの傾向が強く、後追い機能しか考えられていない。YouTubeへの投稿とか、Skypeの追加とか、既にPC用にできた海外のサービスへの対応を考えてしまう傾向にある。PC向けのApplicationを入れることよりも、それを超えることを考えるべきだが、それができていないところに商品企画の欠如というものがある。

◆WEDGE2011年2月号より


 

 


 

 

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