Wedge REPORT

2018年11月27日

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 九州場所で稀勢の里は一人横綱として出場したが、初日から4連敗という5日制が定着した1949年夏場所以降は初となる不名誉な記録を作った挙句、またしても休場した。先場所こそ10勝5敗で辛うじて2ケタ勝ったものの、その前までは歴代ワーストとなる8場所連続休場。普通ならば即座に引退勧告を向けられても不思議はないレベルだ。ところが稀勢の里は昨今の相撲人気を支える日本人横綱であることから協会幹部やご意見番となる横綱審議委員会の面々も明らかに大甘で〝延命〟が看過されてしまっている。ここ最近は毎場所ごとにメディアやファンから「引退目前」と言われ続けているクセに結局は無風のまま。先場所をのぞいて休場ばかりなのにもかかわらず、こうして「横綱」を名乗れている現状をみれば、それは明らかだろう。

 一応、九州場所の千秋楽で横審の委員の1人が「来場所出ないと。これ以上の延命はない」とメディアに発言したが、これは委員会全体の総意ではなく個人の言葉であり、無論「引退勧告」ではない。この程度では単にハッパをかけただけに過ぎないだろう。トップである北村正任委員長が「辞めろとは言わない。来場所頑張ってほしい」と述べていることも、横審が稀勢の里への大甘な姿勢を継続させていることを如実に物語っている。

 中立の立場を自認している古参の日本相撲協会関係者が次のように補足する。

 「要するに稀勢の里が、これだけ休んでも許されたという〝悪しき実績〟を残してしまったのだ。白鵬の立場なら『時々休んでも文句を言われる筋合いはない』と考えたとしても無理はないはず。アンチ白鵬の相撲ファンを中心に『適度に休場しながらコンディションを整えているからズルい』などといったシュプレヒコールが挙げられているが、それは残念ながら的を射ていたとしても説得力はない。『それじゃあ、稀勢の里はどうなんだ』という話になるからだ。しかも白鵬は今年になってようやく初の連続休場があったぐらいで、3場所連続休場に至ってはこれまで一度もない。悪いイメージばかりが先行しているからアンチの人たちがツッコミを入れたくなる気持ちは分からないでもないが、説得力にかけるバッシングなど白鵬にとっては柳に風。結局のところ対抗馬となるべきはずの稀勢の里がだらしないのに周りから過保護にされている流れがあるから、白鵬は今後も堂々と自分のペースで相撲をとり続けることができるのだ」

 来年の初場所から休場明けの白鵬は満を持して復帰してくるだろう。無双横綱にとってすべてが〝都合のいい環境〟となっている今の相撲界で成り上がっていくのは容易なことではない。だが白鵬との不仲がささやかれた元貴乃花親方の「分身」でもある貴景勝が元師匠に代わって牙をむいていく構図には、やはり何かをやってくれそうな期待感が膨らむ。とにかく強く精神的にも図太い百戦錬磨のヒール横綱を22歳の若武者がぶっ倒す。現段階で可能性はあまり高くないかもしれないが、そんな未来がこの先にあることを信じている。

  
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