WEDGE REPORT

2018年12月3日

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出井康博 (いでい・やすひろ)

ジャーナリスト

1965年、岡山県に生まれる。ジャーナリスト。早稲田大学政治経済学部卒業。英字紙「ニッケイ・ウイークリー」記者、米国黒人問題専門のシンクタンク「政治経済研究ジョイント・センター」(ワシントンDC)客員研究員を経て、フリー。著書には、『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)、『長寿大国の虚構 外国人介護士の現場を追う』(新潮社)、『黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人』(講談社+α文庫)などがある。

 ハノイでは、日本語の看板を出し、化粧品やサプリなど日本製の商品を売る店をあちこちで見かける。コンビニに入れば「コカ・コーラ」の小さな缶が、「日本製」というだけでベトナム製普通サイズの2倍の値段で売られている。それほどベトナム人にとって日本は眩(まぶ)しい「ブランド」なのだ。とはいえ、そんな「信仰」がいつまで続くことか。

写真左:「日本製品を売る商店」。ハノイでは、日本語の看板を出し、化粧品やサプリなど日本製の商品を販売するが、商店の看板には誤訳、意味不明の言葉も少なくない。
写真右:「日本製」というだけで倍の値が付くこともある

 日本に渡った留学生たちは、人手不足の企業に都合よく利用され、酷使される。そんな生活を続けるうち、思い描いていた「日本」が幻想だったことに気づく。憧れを抱いて来日しながら、日本に対して嫌悪感を覚えるようになったベトナム人たちと、これまで筆者は数多く出会ってきた。「親日」の外国人を育成するための留学が、逆に「嫌日」の若者を増やしてしまっているのである。

 〝偽装留学生〟たちは日本語学校の2年間では借金が返済できず、専門学校や大学へと〝進学〟して出稼ぎを続ける。日本人の少子化によって、私立大学の4割以上で定員割れが起きている。大学であろうと学費さえ払えば、日本語能力など問わず入学できる学校はいくらでもある。大半の日本語学校がそうであるように、営利目的で留学生を受け入れるのだ。

こちらは「技能実習生」の研修施設に掲げられた標語

 そんな留学生にも今後、日本での就職のチャンスが広がる。法務省は19年春を目処(めど)に留学生の就職条件を緩和する見通しだ。これまで留学生は大学や専門学校で学んだ分野に近い仕事にしか就職できなかったが、大卒であれば実質制限なく、専門学校卒も「クールジャパン」に関係する職種への就職が可能となる。同省は「優秀な外国人材」の確保が目的だと強調するが、その裏では、〝偽装留学生〟を引き留め、単純労働者として使いたい思惑が透けて見える。

 10月に始まった臨時国会では、新在留資格による外国人労働者の受け入れも議論されている。新資格のもと14業種で受け入れが可能となる見込みだが、留学生で人手不足を凌(しの)いでいる職種は他にもある。人手不足対策に加え、日本語学校や専門学校、大学の延命のためにも、〝偽装留学生〟の流入は続く可能性が高い。こうした日本側のご都合主義は、ベトナムなど新興国との関係にも悪影響を及ぼしていく。政府は即刻、〝偽装留学生〟問題を解決すべきだ。

現在発売中のWedge12月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■留学生争奪戦「金の卵」に群がる産業界と大学
PART 1  日本企業が縋る〝金の卵〟留学生
PART 2  ニッポンで働く「壁」を取り除き留学生と企業をマッチング
COLUMN 外国人を活かすも殺すも企業次第
PART 3  ”偽装留学生”はなぜ日本をめざすのか?(出井康博)
PART 4  日本語学校の教育の質の担保を(佐藤由利子)
PART 5  定員割れ大学の延命を図る留学生30万人計画(小川 洋)
INTERVIEW 留学生を〝金の卵〟とするために大学と社会に求められる覚悟
       出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)

  
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◆Wedge2018年12月号より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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