世界で勝てない日本のゲーム業界


Wedge編集部

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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米アップル社のApp Storeからダウンロードするゲームや
Facebook内で仲間と楽しむソーシャルゲームの市場が急拡大している。
一方で家庭用ゲームの市場は縮小の一途を辿り
開発者たちも次々と家庭用からソーシャルゲームに鞍替えしている。
家庭用ゲームが消滅するわけではないが、旧来型の開発体制や流通構造を
見直さなければ「クールジャパン」の象徴であるゲーム業界は世界で勝てない。

 「発売から半年も経過せずに、しかもこれほど大幅な値下げをしたことは、任天堂の過去の歴史にはありませんでした」

 2011年度に全世界で1600万台という目標を掲げながら、4~6月の販売数が71万台と販売不振に苦しむ、任天堂の最新携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」。打開策として同社は7月28日に1万円の値下げを発表した。冒頭の言葉は、そのことに触れた岩田聡社長の弁である。年末には、ビッグタイトルを投入することで巻き返しを図ると宣言したが、株価は下げ止まらず5年10カ月ぶりの水準にまで落ち込んだ。

 「お客様から(中略)ご期待いただいている水準に達していないと、深く反省するとともに、心よりお詫び申し上げます」

 累計販売数は1億本以上。日本を代表するゲームである「ファイナルファンタジー(FF)シリーズ」。その、最新作FF14(Windows版)の発売から2カ月後の昨年12月10日。発売元のスクウェア・エニックスの和田洋一社長は、謝罪コメントと、プロデューサーの更迭を発表した。家庭用ゲーム機プレイステーション3版の発売時期は未定のままだ。

6750万人が遊ぶゲーム

 トラブル続きの日本のゲーム業界。「クールジャパン」の代表格だが、「世界一」とは言えない状況だ。

 1990年代後半、日本の家庭用ゲームソフトは欧米市場で半数近いシェアを占めていたが、最大の北米市場でも3割まで低下した。10年、日米英で任天堂の「ニュー・スーパーマリオブラザーズ・Wii」は580万本販売されたが、最も売れたのは米国のActivisionが発売した「Call of Duty: Black Ops」で1540万本だった。ニンテンドーDSは全世界で1億4000万台以上売れたが、ユーザー数が7億人以上とされる世界最大のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)Facebook内では数千万人が遊ぶ「ソーシャルゲーム」がいくつもある。

 ソーシャルゲームとは、基本的に無料で1人でも遊べるが、他人と協力し、課金アイテムを購入することで、有利に進められるゲームだ。代表的なのは、アメリカのZynga(ジンガ)社が提供する「FarmVille」で、ユーザー数は6750万人(10年月間平均)である。

 「ソーシャルゲームとかネットの世界が盛り上がる一方で、任天堂はパッケージソフトが中心。自分のやりたいことができないから会社を辞めました」

 こう語るのは、約10年働いた任天堂を退社し、08年にゲーム開発会社entersphere(東京都・町田市)を立ち上げた岡本基氏である。岡本氏は、任天堂の情報開発本部でフィットネスゲーム『Wii Fit』のトレーニング及びバランスゲームの内容を考える、トレーニングディレクターなどを担当していた。現在は、会員が150万人を越えるソーシャルゲーム「ヱヴァンゲリヲン」などのヒット作品を手がけている。

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