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2018年11月30日

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武田信晃 (たけだ・のぶあき)

1973年北海道生まれ。新聞社の記者や編集者などを経てジャーナリストとして独立。香港やカナダなどに在住経験あり。

 11月25日、香港で立法会(議会、定数70)補欠選挙が行われ、親中派が支持した元香港政府職員の陳凱欣(レベッカ・チャン)氏が初当選を果たした。民主派は今年3月に行われた補欠選挙でも保有していた議席を落としており、退潮傾向が鮮明になった。

当選した親中派の陳凱欣氏 (ISD)

 2016年に行われた立法会選挙の直接選挙枠では、当選した民主派議員6人が、議会宣誓の中で中国を揶揄するような文言を加えるなど規定通りの方法で宣誓をしなかったとして、裁判所が当選無効という判断をした。

 無効となった6議席のうち4議席の補欠選挙を今年3月に実施したが、民主派は4議席を守るどころか2議席の獲得にとどまり、実質、敗北となった。そして今回は、残る2議席のうち西九龍選挙区の1議席についての補欠選挙だったが、またも民主派が敗北した。

 16年の選挙で落選した民主派の重鎮、李卓人氏が選挙区替えをして立候補したが、同じく民主派で西九龍を長年地場としてきた民主民生協進会(ADPL)所属の馮検基氏がこれに反発。彼も16年の選挙で敗北しており、18年3月の補欠選挙では参戦する意志を示したものの、民主派候補を一本化するために行われた「民主派内の予備選挙」で敗北し、出馬を断念した経緯がある。

 今回は、3度目の正直とも言える選挙戦で、李卓人氏が落下傘的に立候補することは腑に落ちなかった。結果的に2人の民主派議員が立候補し、民主派の票が割れる事になった。

民主派2人の得票数を足しても親中派に届かず…

 親中派の候補は、香港最大のテレビ局無線電視(TVB)などの記者職をしていた陳凱欣氏だ。同氏はその後、政府職員に転職し、出馬に至った。報道の自由を求める記者経験がありながら、親中派から立候補した理由はここにある。美貌と知名度、一枚岩の親中派という組織票を持って選挙戦を戦った。

 結果は陳氏が10万6547票で当選。李氏が9万3047票、馮氏が1万2509票だった。投票率は44.45%で、3月の補選の44.31%を上回ったが、16年の立法会選挙の58.13%を下回った。

 衝撃的だったのは、民主派2人の候補者の得票数を足しても親中派候補の陳氏に届かなかった点だ。民主派の敗北は、雨傘運動では催涙弾を使うなど強硬派だった梁振英前行政長官から、独立派には厳しい姿勢を取るものの梁氏と比べるとソフト路線である林鄭月娥(キャリー・ラム)現行政長官になり、政府への反発が減ったことが影響していると思われる。

 それに加え、今回の補選に至るまでに、一部の民主派の立候補が認められないなど、香港人の間に諦めと無力感が出てきた上、李氏が「心淡」…つまり「覚めた心」と敗因を表現したが、雨傘運動から4年も経過したことで市民の「熱」が失われたことが大きいだろう。

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