WEDGE REPORT

2018年11月30日

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武田信晃 (たけだ・のぶあき)

1973年北海道生まれ。新聞社の記者や編集者などを経てジャーナリストとして独立。香港やカナダなどに在住経験あり。

ますます加速する中国化

 香港立法会は全70議席のうち、半分の35議席が業界団体から選出される「職能団体別選挙枠」で、残り半分が日本のように投票で選出される「直接選挙枠」となっている。職能団体別は、中国とのビジネスの関係から親中派が伝統的に強い。一方、民意を反映しやすい直接選挙では民主派が強かった。

 だが、民主派の内部分裂や親中派の資金力を背景にその差が年を追うごとに縮まってきた。そして親中派が3月の補選で2議席を奪い、民主派が16、親中派が17と数字が逆転した。そして今回、35議席中の残り2議席のうち親中派が1議席を獲得したことで16対18と直接選挙枠でも親中派が過半数を握ることになった。

 これは大きな意味を持つ。親中派は総数では立法会の過半数を握っているが、民意を反映しやすい直接選挙枠ではこれまで過半数を握っていなかったため、法案を通すにしても「後ろめたさ」があった。それが、今後は解消されることになる。

 例えば、香港と中国を結ぶ高速鉄道が9月に開通したが、その時、香港で中国側の税関業務をまとめて行う「一地両検」という制度が提案された。中国公安が香港に入って来ることになるため民主派は抵抗したが、こうした民主派の抵抗に対し、これまでほど配慮が必要ではなくなる。

 民主派はこれまで、政府が提出する法案に対して数十カ所に及ぶ修正を求めたり、時には牛歩戦術もとったりするなど、中国語で「拉布」と呼ばれる引き延ばし作戦を使って抵抗してきた。

 現在、議長は親中派が務めており、すでに議長の裁量を大きくする規則が整備されてきたが、今後は民意をバックに、議事運営のルールに関してさらに親中派に有利な立法会運営ができる規則に変えることが予想されている。法制化がスムーズになるため、香港社会の中国化のスピードは結果的に速くなる。

 中華系は世界中にチャイナタウンがあるように、海外への移住をいとわない文化がある。香港人のカナダへの移住は、1997年に香港が中国に返還される前からすでに行われているほか、最近は台湾に移住する香港人も多い。選挙結果を含めた現在の香港の社会状況を勘案すると、香港から出ていく人の数は増えても減る事はないだろう。若者から見放されている民主派には、今後の選挙活動においても厳しい戦いが待ち受けていることは間違いない。

  
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