前向きに読み解く経済の裏側

2018年12月3日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

官製カルテルは実に美味しいが、気づかない当事者も多い

 カルテルは、独占禁止法で禁じられています。売り手が結託して値上げをすると、買い手が酷い目に遭うから、ということです。もっとも、場合によっては官製のカルテルが結成されることがあります。

 露骨な官製カルテルではなくても、各種規制が事実上官製カルテルとして機能することもあります。新規参入を規制することで既存業者が競争に晒されにくくなるケースなどが典型的でしょう。

 それと比べると、本件はわかりやすい官製カルテルですね。レジ袋の値上げ(ゼロから有料)を全社一斉に行わせるわけですから。それに対してコンビニ業界がこれまで反対してきたというのは、理解に苦しみます。

 自分だけが行った場合と皆が一斉に行った場合の影響の違いは、想像力を駆使しないと思いつかない場合が多いので、今回もそうだったのかもしれません。そうだとすれば、残念なことです。

 合成の誤謬という言葉があります。皆が正しいことをすると皆が酷い目に遭う、ということです。「株価暴落の噂を聞いて皆が売り注文を出すと、本当に株価が暴落して全員が損をする」といった話ですね。

 本件は、その逆ですね。各社にとっては、レジ袋の有料化は一社だけが行なう場合にはライバルに客を奪われかねない愚策かもしれませんが、皆で一斉に行えば皆が豊かになれる、というわけですから、「逆合成の誤謬」とでも呼びたい気分です(笑)。

過去の代表的な官製カルテルは、自動車の輸出自主規制

 過去の有名な事例は、米国政府の圧力によって日本車が対米輸出台数の自主規制をした1980年代のケースでしょう。通商産業省(現在の経済産業省)が、自動車各社に対米輸出台数を割り当てたのです。

 これに対して、自動車産業は反対しました が、米国からの圧力が強かったため、自主規制は結局実施されました。その結果、日本車は米国で品薄となり、値上がりしましたから、自動車各社は大いに利益を稼いだはずです。

 したがって、結果を見れば、自動車産業が自主規制に反対したのは誤りだったということになりそうですが、自分だけが輸出数量を自主規制する場合と皆が一斉にする場合の影響の違いは、予想しにくかったのでしょうね。

 今ひとつ、日本車がそれほど人気だ、ということに当の自動車メーカーが気づいていなかった可能性もあります。「日本車の輸出が減れば、米国の消費者は米国車を買うだろう」と思っていたのでしょう。まさか「日本車は品薄だから値段が上がっているが、それでも買いたい」という消費者が米国に大勢いるなど、想像できなかったのかもしれませんね。

 その後、自動車各社が米国での現地生産を増やしたため、官製カルテルの効果が剥落してしまいましたが、それまでの間、自動車各社が恩恵を受けていたことは間違いないと思います。

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