田部康喜のTV読本

2018年12月5日

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田部康喜 (たべ・こうき)

東日本国際大学客員教授

福島県会津若松市生まれ。幼少時代から大学卒業まで、仙台市で暮らす。朝日新聞記者、朝日ジャーナル編集部員、論説委員などを経て、ソフトバンク広報室長に就任。社内ベンチャーで電子配信会社を設立、取締役会長。2012年春に独立、シンクタンク代表。2015年10月から東日本国際大学客員教授として地域振興政策を研究、同大・地域振興戦略研究所副所長を兼務。

(silvabom/iStock/Getty Images Plus)

 NHKプレミアム「クロスロード」(毎週日曜よる10時)は、舘ひろしの警官・尾関辰郎と神田正輝のジャーナリスト・板垣公平が、それぞれの視点から事件に取り組む。ふたりはときに反目し、ときに協力しながら謎を解いていく。2016年2月に始まったシリーズは、「群衆の正義」を副題にして第3シリーズを迎えた。

 刑事物の陰惨な殺人現場も、騒々しいパトカーの音も、ジャーナリストの派手な動きも、このシリーズにはない。画面にスキャットの声が流れて、ドラマは余韻を残しながら静かに展開していく。今季ドラマも「相棒」(テレビ朝日)や「ドロ刑」(日本テレビ)など、刑事物がゴールデンタイムに並んでいる。それはそれとして、「クロスロード」の舘と神田の渋い演技に浸ってみてはいかがだろうか。

殺人事件の真相に迫る刑事とジャーナリスト

 尾関辰郎(舘)はかつて警視庁捜査一課の敏腕刑事だったが、冤罪事件をマスコミにリークしたことから左遷されて、青梅中央署警務課から大森臨港署刑事課そして警務課勤務になった。定年の歳を迎えて、署長からは定年延長で警察に残るように勧められるが、辞めるつもりである。

 板垣公平(神田)の記者人生も紆余曲折経てきた。大手新聞社からフリーランスの記者となって週刊誌に活躍の舞台を求めた。しかし、中学一年生の女生徒の自殺事件を追って、学級内のいじめを報道、それによって加害者の女生徒がネットに名前がさらされ、彼女は自殺未遂事件を起こす。この事件によって、板垣はメディア界から実質的に追放された。

 シリーズ3「民衆の正義」のなかで、ふたりが直面する事件は3人の男女が殺された「大田区連続殺人事件」である。第1回「嘘」(12月2日)は、テンポのよい画面の切り替えとセリフによって、板垣と尾関の過去を紹介しながら、殺人事件が板垣によってかつて書かれた、中学一年の女生徒の自殺事件と関わりがあることを暗示していく。

 海辺で過去の取材ノートを燃やしていた、板垣は乗用車のなかでぐったりとしている見崎茜(志田未来)に声をかける。そのとたんに体当たりしてくる男性に横倒しになる。ネットで動画ニュースを流すジャーナリストの藤城紫苑(風間俊介)である。

 茜(志田)は、「大田区連続殺人事件」の容疑者と思われる男に、犯行があった夜に自宅に侵入された。事件のカギを握りながら、それ以来逃亡を続けている。ネットでは茜の名前が明らかにされたからだ。藤城(風間)は茜をかばいながら、一緒に逃げていたのである。

 藤城は、板垣(神田)がジャーナリストで、中学一年の女生徒の自殺事件を報道したことを知っている。板垣からもらった彼の名刺を手にしながら、茜にそのことを告げるのだった。

 そして、いじめの加害者の女生徒の名前をネット上でさらしたのが、茜だったのである。連続殺人事件が起き、茜が巻き込まれたことによって、そのこともネットで書かれた。

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