WEDGE REPORT

2011年8月30日

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漆原次郎 (うるしはら・じろう)

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、科学技術関連の記事を寄稿。早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラム修了。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』『日産驚異の会議』『宇宙飛行士になるには』など。

 ただし、いまは技術より理論が先行している段階で、実用化までにクリアしなければならない技術的課題はある。例えば、量子ドットの大きさの均一化だ。大きさがばらばらな量子ドットが混在すると十分な電圧が得られなくなってしまう。シリコンなどで作る量子ドットを、直径2ナノメートル(ナノは10億分の1)程度の寸法で揃えて作る超微細加工技術が必要となる。

量子ドット型太陽電池の代表的なタイプの概念図。量子ドットを積層することで、光の取りこぼしを減らせる(画像提供:岡田氏)。
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 太陽光発電全般について言えるのは他の多くのエネルギーに比べて発電コストが高いということ。太陽光発電のコストは現在1キロワットあたり40円ほどだ。対して、水力は10円、石油は14円、原子力は5円、風力は12円ほどだ。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が太陽光発電の発展の将来像を描いた「PV2030+」というロードマップには、2050年のところに「新しい原理、構造による超高効率(40%)太陽電池の投入」が示されている。中心技術と目されるのが量子ドット太陽電池で、この時点でのコストは1キロワット時あたり7円以下。これでようやく現状の火力発電や原子力発電のコストと勝負できる程度となる。

海洋国家発のバイオマスエネルギー
海藻から水素をとりだす

 次に、「三大再生可能エネルギー」の一角、バイオマスエネルギーの日本での将来性を見ておきたい。

 まず、企業、研究者、行政の共通見解としてあるのは、サトウキビやトウモロコシを育てて燃料を得る米国・ブラジル的手法は日本ではナンセンスということだ。食糧自給率が40%前後と低い日本が、農業大国の米国やブラジルをまねできるはずがない。

東京海洋大学・能登谷正浩名誉教授。

 ただし、日本でも可能なかたちでバイオマス利用の活路を見出そうとしている研究者もいる。東京海洋大学名誉教授で海洋生命科学を専攻する能登谷正浩氏は、ホンダワラという海藻を海で育てて回収し、バイオ燃料としてアルコール生産を行う構想を三菱総研とともに打ち上げている。さらに、バイオマスエネルギーを利用した水素生産に関する研究を元横浜国立大学教授の谷生重晴氏と共同で取り組んでいる。

 能登谷氏が描いている海藻利用構想は、例えば次のようなものだ。九州の玄界灘などでホンダワラを放流する。放流されたホンダワラは、対馬海流に乗って成長しながら津軽海峡まで向かう。青森県沖にたどり着いたホンダワラを回収し、当地のバイオマス転換工場で燃料をつくる。

 「海洋大国である日本の強みを生かそうという発想です。海水の浄化作用も期待できる。海藻のまわりには魚も集まり、漁獲にも効果がある。そして燃料を得ることができる」と、環境保全、漁業資源保全、燃料生産の“一石三鳥”の効果を能登谷氏は強調する。「一般的なバイオ燃料生産には、環境保全や天然資源保全の観点が抜けています。サトウキビ畑を開墾するなどして、環境破壊をしながら燃料をつくるのであれば、将来、再び同じような環境問題を出すことになる。地球環境や資源保全に関する問題を先のばしにすることにしかならないことを考える必要があります」。

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