2024年4月23日(火)

日本人秘書が明かす李登輝元総統の知られざる素顔

2018年12月8日

あまりに違った「会場の熱気」

 投票前夜ながら対照的だったのが民進党陣営だ。いったんMRTの入口から地下を抜けて反対側へ向かうのだが、改札口近くまでは人の流れに逆行するかのようだ。ただ、それをやり過ごすと民進党の姚候補の会場へ向かう人の流れが少ない。「こんな有様で大丈夫なのか」と他人事ながら不安になるほどだ。会場に到着すると、柯候補の会場とは異なり、スッと中へ。

 すでに午後8時半をまわり、選挙活動終了まで残り2時間を切ったというのに、集まっている支持者の密度が全く違う。そして何よりも大きな差は、若者の数が少なく、中年以上の世代が大部分を占めていることだ。

民進党・姚文智候補の選挙演説会場。中高年の姿が目立つ(写真:筆者提供)

 先ほどの柯候補の会場と同じく、こちらでも若いミュージシャンが登壇し、ラップ調の曲で会場のボルテージを上げようとするのだが、いかんせん支持者のおばちゃんたちがついていけてない。ステージ上で流れる軽快なラップに懸命に合わせて小旗を振っているのだが、どうみてもテンポが演歌である。

 若者の支持者の多さが勝利に直結するとは言えないが、会場の熱気、という点では明らかに柯文哲候補に軍配が上がった投票日前夜の集会であった(結果、柯文哲候補は国民党候補とのデッドヒートを制して勝利。民進党の姚文智候補は得票率18%弱とふるわなかった)。

「まさかあれほど負けるとは……」

 統一地方選挙の結果はご存知の通り、民進党の惨敗に終わった。振り返ってみれば2014年春、中国とのサービス貿易協定締結を強引に進めるなど、中国との過度な接近が目立った国民党の馬英九政権に若者たちの不満が爆発。

 その不満は「太陽花運動(ヒマワリ学生運動)」となって台湾全土を巻き込む潮流となり、同年秋の統一地方選挙で国民党は「前代未聞」と言われる惨敗を喫した。

 代わって躍進したのは民進党で、その勢いのまま2016年1月の総統選挙も制したのは記憶に新しい。前回の統一地方選挙では、ヒマワリ学生運動から派生した政党・時代力量も立法委員を輩出し、国民党はもはや消滅してしまうのではないかという見方もあったほどだった。

 それから4年、蔡英文総統の誕生からも2年半が経過した。選挙前から民進党にとって厳しい結果になるとは予測されていたが、選挙後に民進党の関係者に聞くと「まさかあれほど負けるとは思っていなかった」と返ってきた。前回の選挙で国民党が味わった辛酸がそのまま民進党に降りかかったかたちだ。

 一部では「もはや2020年の総統選挙で民進党に勝ち目はないのでは」などという気の早い観測も流れている。


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