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2018年12月11日

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竹田有里 (たけだ・ゆり)

環境ジャーナリスト

環境ジャーナリスト。TOKYO MXでニュースキャスター、社会部・政治部記者を歴任。災害報道や環境番組を制作した後、フジテレビの環境ドキュメンタリー番組「環境クライシス」の記者として企画制作・出演。その傍ら、上智大学地球環境学研究科(修士)に在籍し、今秋修了予定。その他、雑誌・ウェブページでも執筆。文化放送「斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI!」でサブキャスター・記者としても活躍。

 さらに、漁獲枠の調整を行う“海区調整委員”制度があるが、現行の漁業法では、漁業者間の選挙で選出された“漁業当事者”が議論に参加できた。しかし法改正では、選挙による選出が廃止され、知事に任命された者のみが議論に参加できるように変更された。民主的に選ばれた当事者参加の機会を剥奪することになる。限られた漁獲枠をみんなで配分するのだから、どう配分されても満足する者はいない。しかし、同じ不満でも、“納得いく”のと“納得いかない”では全然違う。

 ノルウェーでは、漁業者の代表が話し合って漁獲枠を決める。漁業者間の話し合いがまとまるまで漁獲枠は行政から与えられない仕組みになっている。

 本来は、当事者を交えて、透明性のある漁獲枠配分の実現を目指さなければならないのに、今回の法改正は完全に逆行している。

3つ目は、「資源管理の成功実績がないなかで一気に改革を行おうとすること」。

 TAC対象魚種を現行の8魚種から、全体の8割の魚種を対象設定することも盛り込まれているが、そもそも現行の8魚種のTACすら適切に設定できていない。あまりにも拙速すぎる。魚種を増やすまえに、現行の魚種のTACを機能させるべき。

 さらに、現在行われている過剰漁獲を防ぐための漁船のサイズ規制があったが、法改正では、漁獲枠による資源管理が機能することを前提に、漁船のサイズ規制撤廃が盛り込まれている。日本では、漁獲枠が科学的に決定される保障はない。これまで通り、過剰な漁獲枠が設定され続ければ、そうなれば、漁船の大型化によって、海洋資源はますます枯渇へと向かうでしょう。

――今回の法改正をどう評価するか?

勝川:目指す方向は間違えていないと思うが、運用に記述が曖昧であり、運用次第でかえって漁業を衰退させる危険すらある。今回の法改正は、ゴールではなくスタートと捉え、運用について注視していく必要がある。

 日本は、どういう漁業を今後未来に残していくのか。国連のFAOの責任ある漁業の行動規範やSDGsでは、小規模伝統漁業に漁業枠を優先的に付与することが明記されている。、「小規模伝統漁業の保護」を日本の漁業法にも入れるべきだったと思う。

 既得権が複雑に絡み合った中で、体制を変えるのはハードルが高いが、適切に管理すれば“利益”が出る漁業は多いだろう。法改正を機に、消費者も交えて、海洋資源のあり方を議論する場が増えることを期待したい。

  
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