野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2018年12月12日

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野嶋 剛 (のじま・つよし)

ジャーナリスト

1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com

孟晚舟の「経歴と人柄」

 武漢にある華中理工大学(現・華中科技大学)を卒業した彼女は1993年にファーウェイに入社した。それまでも複数の企業で働いていたが、あまり順調ではなく、リストラの目にもあったという。ファーウェイには三人いる秘書のひとりとして採用された。その後、社員のまま母校の華中理工大学で修士号を取得。その後会社に戻り、財務畑で歩んでいく。中国人の会社で親族や側近が任せられる仕事はカネがからむ財務関係で、最も信用できる身内で固めるものだ。

 孟晩舟が表舞台に出てくるのが、2011年。ファーウェイの常務取締役となると同時にCFO(首席財務官)を兼任し、のちに副社長にも昇格している。あまりメディアの取材や公の場に姿を見せないところは創業者の父親と似ているが、決算発表では自ら会見したこともあり、ストレートでやや乱暴な物言いで知られる父親と違い、物腰はスマートでソフトだったらしい。

 孟晚舟の夫は劉曉棕という人物で、かつてファーウェイで働いていたが、その後退職して創業している。娘が一人いて、劉曉棕と娘はいずれもバンクーバーで生活している。孟晚舟にも離婚歴があり、一部のメディアは4度の離婚があったなどと報じているが、確実なのは一度だけで、その前の夫との間に3人の子供がいるという。孟晚舟はいまカナダ当局に保釈を要求しているが、カナダに有する1400万カナダドル(約12億円)相当の不動産物件を担保に差し出すことを申し出ているという。

注目される「カナダ国籍」の有無

 いま注目されているのは、孟晩舟がカナダ国籍を有していたかどうかで、巷間噂されている通り、カナダ国籍を持っていたら、今回の逮捕はカナダ国民に対するカナダ当局の警察権の行使ということになる。中国の要人やその子弟の多くが政変に巻き込まれたり不正が摘発されたりしたときの「保険」のため、外国の旅券を秘密に保有していることは周知の事実だ。

 現在まで、孟晩舟は中国の旅券と香港の旅券の両方を有していることがわかっているが、カナダ国籍がある場合は、中国の国籍法では外国籍取得による自国籍の同時所有は認めていないため、中国国籍は自動失効となる。しかし、中国政府は米国やカナダの大使を呼び出し、孟晩舟が中国公民であることを前提に交渉しているので、仮にカナダ国籍があったとしても、当面は見て見ぬ振りをすることになるはずである。

  
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