2024年4月18日(木)

World Energy Watch

2018年12月13日

炭素税でも格差が

 もう一つの理由は、炭素税でも格差があることだ。マクロン大統領の政策により企業、富裕層が税制面などで優遇されているとの不満が国民の間に溜まっていたところに、炭素税でも多くの例外が認められていることに不満が噴出した。

 農業、漁業、運輸部門は、税免除になっている。さらに、EUでは二酸化炭素の排出量の多い鉄鋼、セメント、化学などのエネルギー多消費型企業などは、排出枠取引制度の下二酸化炭素の排出枠の割り当てを受けているが、これらの企業も税免除とされている。排出枠の価格は最近上昇を続けているが、12月11日時点で二酸化炭素1トン当たり約20ユーロだ。炭素税の元になっている価格55ユーロとは大きな差があり、二酸化炭素を排出している大企業が優遇されていると国民が不満を持つことになった。

 11月6日のマクロン大統領の炭素税額引き上げ発表後から、右派国民連合は11月17日のデモを呼びかけ、そこに極左政党も相乗りし、さらにSNSを通じデモが広がったが、これを党勢拡大に利用しようとする政党の姿勢も見えている。マクロン大統領と大統領選の決戦投票を戦い敗れたマリーヌ・ル・ペン国民連合党首は、「政府は、反政権の姿勢を平和的に示そうとするフランス国民を恐れるべきではない」とツイートしている。

 来年行われるEU議会選挙での投票行動に関する11月の世論調査では、国民連合はマクロン大統領が率いる共和国前進を支持率で上回り1位になっている。マクロン大統領の支持率が20%台前半に低迷し、デモを支持する国民が70%から80%に達するとの世論調査があるなかで、デモを党勢拡大に利用しているようだ。


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