イノベーションの風を読む

2018年12月21日

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川手恭輔 (かわて・きょうすけ)

コンセプトデザイン・サイエンティスト

1990年代から、大手メーカーでインターネットサービスの企画・開発・運用を手がけ、自ら立案したグローバルなサービスを複数立ち上げた経験を持つ。その1つは、サービスのデザインでグッドデザイン賞を受賞した。コンピューターサイエンス関連の翻訳本も多数ある。

MaaSの社会的意義

 自動車移動への依存度が増した日本の都市や地方地域は、交通事故の増加や交通渋滞、駐車場不足などの交通問題と、それに起因する温室効果ガス排出や大気汚染などの環境問題を抱えています。自動車の電動化は将来的に環境問題の解決につながりますが、まず絶対的な交通量を削減しなければなりません。それには大量輸送が可能な鉄道やバスなどの公共交通の利用促進が不可欠です。

 フィンランドのヘルシンキでは、4万人の住民がMaaS Globalというベンチャー企業が提供するWhimというスマホアプリを利用しています。MaaS Globalは、Whimのユーザーが移動手段として自家用車を選択する割合が40%から20%に減り、逆に公共交通を利用する割合が48%から74%に増加したと報告(2017年9月)しています。

 しかし、米国ではライドヘイリングサービスなど、新しいモビリティサービスによって公共交通の利用が減少し、客待ちの自家用車で朝夕のラッシュアワーの交通量が増加してしまったという報告もあります。

 公共交通の利用を促進し交通量を削減するためには、まず公共交通自体を、より便利で快適なものに改善しなければならないでしょう。さらに、最寄駅から自宅や最終目的地までのラストワンマイル、買い物や通院などのための生活の足など、公共交通を補完する短距離の移動、すなわちマイクロモビリティのサービスを充実させて、いろいろな移動ニーズに応えられるMaaSを提供する必要があるのではないでしょうか。それは、ヘルシンキのように、その地域の行政の積極的な関与がなければ難しいと思います。

 ロサンゼルス市も、Whimと同様のスマホアプリGoLAを、行政サービスとして2016年から提供しているMaaSオペレーターです。ロサンゼルス市は、公共交通のサービス提供者でもあります。地下鉄や路面電車(LRT)、そしてバスを基盤とした大量輸送システム(BRT)の充実に力を注いでいます。

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