2024年4月19日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年9月6日

 中国政府がこの発言を聞いて胸をなでおろしたのは言うまでもないが、「尖閣諸島や東シナ海ガス田開発など、日本の原則を明確に打ち出さなければならない主権問題で摩擦が起こる可能性は高い」と見る中国共産党関係者が多い現実も変わらない。

駐日公使は「松下政経塾」出身

 では中国にとっての対日「切り札」とは何なのか。

 一つは「松下政経塾」だ。野田が松下政経塾1期生であり、後輩に新外相となった玄場光一郎がいるが、中国政府にも実は松下政経塾出身者がいることはあまり知られていない。7月にフィジー大使から在日中国大使館に赴任した韓志強公使は1980年代、松下政経塾で学んだ経験があるのだ。

 新内閣で対中外交を統括する玄場は、これまで外交経験がなく、各国政府とも「玄場情報」に乏しいと言われているが、日中関係筋は「韓公使は玄場らと親しい関係にある」と指摘する。

 韓公使は8月、「日中協会」で講演した際、「(日本の)政治が安定することが大事。政治が安定すれば、国のプログラムをスムーズに推し進められるし、外交上の日程もまっとうできる。中日関係も安定し、やりやすいという感じがする」と漏らした。さらにこう続けた。

 「国民感情の問題について私が20年来得た教訓は、両国の国民感情が良かった時代もあるし、昨年下半期のように底に落ちることもある。政治の指導とマスコミの役割が大きい。領土や基本的主権の問題も隣人同士で避けることは難しい。お互いの立場を理解して慎重に扱うことが大事で、デリケートな問題があった際、意思疎通を行って双方の立場を損ねることないことが重要だ」

対日外交仕切るのは今も唐家璇氏

 さらに韓の強みは、唐家璇前国務委員(元外相)の秘書だったことだ。「胡錦濤国家主席や温家宝首相は今も対日政策で唐氏に相談している」と漏らすのは中国政府の対日当局者だ。唐は引退後も対日政策で絶大な影響力を持つ。

 韓志強の公使就任は「異例の人事」(日中関係筋)とされているが、自らも駐日公使として政界工作を行った唐家璇が日本に送り込んだものだ。中国政府は、韓志強を通じ、野田、玄場ら松下政経塾出身者への接近を強めるのは言うまでもない。

中国共産党の対日戦略

 もう一つの「切り札」は、「民衆工作」である。北京の外交筋はこう指摘する。


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