メイドインニッポン漫遊録 「ひととき」より

2019年2月4日

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いであつし (いで・あつし)

コラムニスト

1961年、静岡県生まれ。コピーライター、「ポパイ」編集部を経て、コラムニストに。共著に『“ナウ”のトリセツ いであつし&綿谷画伯の勝手な流行事典 長い?短い?“イマどき”の賞味期限』(世界文化社)など。
 

 「親父の決心が社名に表れていますよね。モノづくりのこだわりが人一倍強くて厳しい人ですから寝袋の品質はどこにも負けません。ただ、ええもんはええんや。使ったらわかるからとりあえず買ってくれという職人気質だったので、私が子供の頃は、社員の雇用を守るために家も会社もとにかく大変でした」

 3代目社長の横田智之さんはそう語る。ナンガの名前を、ジャパンダウンジャケットのブランドとして一躍有名にしたのが彼だ。

3代目社長の横田智之さん。自称インドア派だがチャレンジ精神旺盛で今では登山もキャンプもプロ級の腕前

 「寝袋で寝たこともなかったし、本当は山でキャンプよりリビングでテレビを観ながらごろごろしてたいインドア派です(苦笑)」

 ありゃりゃ、ナンガの社長らしからぬ発言であります。それもそのはずで、20代前半まではブライダルの貸衣装会社でトップ営業マンだった。平成11年、長男の智之さんは父親に呼び戻されてナンガに入社。入社早々、長野の専門スクールに入らされて2カ月間みっちりと登山を学んだ。その後、職人気質で営業力のまったくない父親に代わって、取り引き先を営業で何軒もまわらされた。

 平成21年、32歳で3代目社長に就任する。社員と会社の将来を考えると既存の寝袋メーカーのままでなく、何か新しい事業を始めることが不可欠だった。父親と同じことをしたくないという反骨精神もあった。

海外で人気の高い「マウンテンビレーコート」のUSモデル、76,000円(税別) ※写真はサンプルのため本製品とはデザインに若干の相違があります

 そこで智之さんが活路を見出したのが、羽毛の取り扱いに長けた寝袋メーカーならではの縫製技術を活かしたダウンジャケットだ。

 「社員時代に某アパレルメーカーからOEM※の依頼があってダウンジャケットを作ったことがあるんです。でも何のノウハウもなくて出来も悪くて、納期も遅れて大赤字で、翌年には依頼が来ませんでした。親父からも怒られて散々でした。その苦い経験があったおかげで、なにくそと徹底的に勉強し、だんだんとまたOEMの依頼が増えてきて、ついには売り上げが寝袋を抜くまでになりました。ここ3年ぐらいで、ようやくダウンジャケットのナンガという自社のブランド力で勝負できるようになってきたと思っています」

Original Equipment Manufacturerの略語で、製造メーカーが取引先のブランドの製品を受注・製造すること

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