チャイナ・ウォッチャーの視点

2018年12月25日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 さらに、CCTVは、2018年4月、大連造船所で建造され2017年4月に進水した中国初の国産空母の第一回試験航海においてどのような項目が試験されるかなどについて報じ、人民日報は、同年8月26日、中国が「第2回」と言う試験航海について報じ、試験航海前に戦闘機や大型ヘリコプターの実寸大模型が飛行甲板上に現れたことから発着艦に関する試験を行うと見られる、など、詳細に報じた。

 これら報道に引き続き、中国国営新華社通信は同年11月25日、中国海軍3隻目となる空母について、「順調に建造中だ」と報じた。中国国営メディアが建造中の空母について公式に報じるのは初めてのことである。同報道は、ウクライナから購入した「ワリヤーグ」を修復した1隻目の空母「遼寧」における艦載機の発着艦成功から、11月で6年となることを記念して行われたものだという。さらに、同報道は、遼寧省大連で試験航海中の2隻目についても、「就役間近だ」と強調した。

対外発信をしたい時に香港を用いてきた中国

 このような開発中の武器装備品に関する報道からは、中国が、米国をけん制するために、開発中の最先端の武器まで動員して軍事力を誇示する様子が窺える。しかし同時に、中国から米国に対して異なったシグナルも出ている。

 香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストは、同年11月27日、空母建造計画に関わる者の話として、「米中貿易摩擦の影響などで、中国の新空母の建造に遅れが生じている」と報じた。また、習近平政権は、米国トランプ政権への刺激を避けるため、4隻目の建造計画を延期したともいう。

 同報道によれば、中国海軍は、2030年までに4隻の空母を保有する計画であるが、同関係者が「最近できた4隻目の建造計画が、米国との貿易戦争が続く中で、延期された」と証言したというのだ。さらに、米中貿易戦争によって中国経済が減速し、習近平政権は「米国をこれ以上、怒らせたくない」と考えているともいう。

 この報道は、それ以前の米国に対して軍事力を誇示する報道とは異なり、米国に対して配慮しているというシグナルである。中国は、これまでにも、対外的に意思を発信したい時に香港を用いてきた。同報道に、中国指導部のそのような思惑があったかどうかを示す証拠はないが、同メディアが英字紙であることも、対外向けの発信であることを示すものだ。習近平政権が、米国に対して配慮する姿勢を、中国国内に広く知らせることなく、米国を始めとする他国に知らせようとした可能性もあるのである。

 中国から発せられるシグナルを深読みするのは、常に慎重でなければならない。しかし中国の共産党および政府系のメディアによる報道は、中国国内外に向けて、中国指導部が伝えたいと考える内容を意図的に発信するものである。このような、中国が対外的に発するシグナルが変化する時は、中国の方針が変わったことを意味するが、問題は、複数出てくるときである。まだ、方針が決まらず、複数の意見が表出する状況は、中国の国内政治的には、安定しているとは言えない。こうした状況が、中国の対外政策にどのような影響を与えるのか、慎重に見極める必要がある。

  
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