前向きに読み解く経済の裏側

2019年1月7日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

米国の景気が急激に後退する

 米国の景気は、メインシナリオとしては拡大を続けると思いますが、リスクを指摘する市場関係者も多いので、それ自体が景気を後退させてしまうリスクには要注意でしょう。

 債券市場の投資家は、何らかの理由で景気悪化を予想しているようで、長短金利が逆転しそうです。ちなみに、10年物金利と2年物金利の逆転を長短金利の逆転と呼ぶ人が多いので、正確ではありませんが、本稿もそれに従っておきます。

 それを見た株式市場の参加者が景気悪化を予想して株を売り、企業経営者が景気悪化を予想して設備投資を手控えることで、本当に景気が悪化する可能性があるとすれば、それはリスクでしょう。

 さらに深刻な問題となり得るのは、金融機関が景気後退を予想して与信に慎重になる可能性です。最悪の場合は「美人投票的な信用収縮」が発生するかもしれません。

 株の世界での美人投票は「皆が売るだろうから、値下がりするだろう。その前に自分も売ろう」というものですが、こちらは「皆が融資を絞るだろう。倒産が増えるかもしれないから、融資には慎重になろう」と皆が思う、というものです。

 その結果、皆が本当に融資に慎重になり、本当に倒産が増え、皆が一層融資に慎重になる、といったことが起きる可能性があります。

 まあ、最悪のシナリオは考えればキリがありませんが、起きる可能性は小さいので、過度な懸念は不要でしょう。

過度な懸念は不要だが、目配りを

 それ以外にも、英国のEU離脱が何の合意もなく実行されたら、英国とEUの経済に大きな打撃が生じるかもしれません。フランスのデモが拡大して収拾がつかなくなれば、フランス経済が麻痺してしまうかもしれません。欧州と日本の貿易はそれほど活発ではありませんから、影響は限定的だと思いますが。

 中国や欧州では、金融機関の経営が傾いたりして金融危機が発生する可能性もあるでしょう。そうなると、中国や欧州で資金の取引が困難となり、信用の収縮が発生するかもしれません。

 もっとも、基軸通貨である米ドルで信用の収縮が発生したリーマン・ショックとは異なり、仮に信用が収縮しても影響は地域内に限定されるでしょうから、世界経済が大きく落ち込んだリーマン・ショックのようなことにはならないでしょう。

 本当に怖いのは米国での信用収縮で世界中の資金取引が凍りつくことですが、2019年についてはそうした可能性は非常に小さいと筆者は考えています。

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