BBC News

2018年12月27日

»著者プロフィール

トム・エッジントン BBCリアリティー・チェック(ファクトチェック)チーム

ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)をめぐり、イギリスのトニー・ブレア元首相が、2度目の国民投票を求める主張を再び繰り広げている。可能性があるブレグジットの形態1つ1つについて議会で投票し、どれも合意に達しない場合に実施すべきという。

かつて労働党党首も務めたブレア氏は、BBCラジオ4の番組「Today」で、「議会は行き詰まった。議会が決められないなら、国民が決める形に戻ろう」と語った。

労働党の公式な立場は、テリーザ・メイ英首相が欧州連合(EU)と合意した離脱協定案が議会で否決された場合、解散総選挙の圧力をかけるというもの。もし総選挙が実現しなかった場合は、再度の国民投票を支持するのも選択肢になりうると、労働党は表明している。

しかしメイ首相は、再国民投票の予測を否定している。メイ氏は下院議員らに対し、2016年に実施した国民投票の結果が「尊重されるべきだ」と繰り返し語ってきた。

だが、もしブレア氏が求めている通り、下院がブレグジットをめぐる膠着(こうちゃく)状態を打ち破るために2度目の国民投票を実施すると決定したら、どうなるのだろうか?

英選挙管理委員会はBBCニュースに対し、「適切な対応策」を有しており、「あらゆる予定外の投票に迅速に対応する」準備ができていると語った。

期限っている

イギリスのEU離脱予定日は、2019年3月29日。残り100日を切り、時間が最も差し迫った問題だ。

英議会が2度目の国民投票実施を採択した場合、投票規則や選挙運動規則を定める法律にも上下両院の支持が必要になる。

2016年の国民投票では、投票日の7カ月前に関連法案が議決された。

しかし、今回はもっと早い法制化が可能なのだろうか?

法制化の速度を上げるため、前回の国民投票に関する諸規則を定めた2015年国民投票法をひな型にし、実質的に大部分を写してしまうのが、あり得る選択肢の1つだ。

英ユニヴァーシティー・コレッジ・ロンドン公共政策大学院憲法ユニットのアラン・レンウィック副ユニット長は、「理論上、このやり方は非常に素早く完了できる」と話す。

もしこのやり方が採用されても、法案の議会通過はおよそ11週間かかるとレンウィック氏は推計している。

この予定表を基にすると、法案通過は2月後半になると予想される。ただし、法制過程を今開始すればの話だ。

投票用紙の選択肢を、2016年の国民投票における「離脱」か「残留」かの2択ではなくし、複数の選択肢を含めるよう下院が要求した場合、かかる時間はもっとずっと長くなると、レンウィック氏は付け加える。

何を問うのか

あり得る選択肢の範囲からどんな質問を選ぶかは、最終的には英議会の決定に委ねられる。

離脱協定の最終合意に国民投票を求める「People's Vote (人民の投票)」運動の見解では、テリーザ・メイ首相の離脱協定とEU残留のどちらかを選ぶのが推奨される選択肢だが、投票参加者に3つの選択肢から選ばせる可能性も除外しないという。

再び国民投票が実施されるなら、投票用紙に「残留」の選択肢はあるべきでなく、メイ首相の離脱協定か、合意なしでのEU離脱かの二者択一であるべきとの主張もある。

他の選択肢もある。デイヴィッド・キャメロン内閣で運輸相や国際開発相、メイ内閣で教育相や女性・平等担当相を歴任し、2度目の国民投票を支持しているジャスティーン・グリーニング氏は以前、3つの選択肢を求めた――。

  • 英政府とEUが合意した離脱協定を承認
  • EU残留
  • 合意なしでのEU離脱

複数の選択肢がある場合、下院はどんな投票制度を使うかも決定する必要がある。たとえば、選択肢を1つ選ぶのか、望ましいほうから順番をつけるのか、というように。

選挙管理委員会は、提案された質問を試験し、それらが「明白に、単純に、そして中立に」示されていると確認する必要もある。

選挙運動を行う公認団体の選定も必要だ。

選挙管理委員会はそれから、国民投票の参加方法を有権者に情報提供する必要がある。また、全国で開票担当者の確保も必要だ。

これらの準備が終わると、選挙運動期間が始まる。運動期間は、通常4週間続く。そしてやっと、投票そのものが実施される。

選管はBBCニュースに対し、2000年制定の政党、選挙、国民投票法で定められている法案通過から投票当日までの全ての手順には、最短でも10週間かかると説明した。

このことから、法案通過と選挙過程の両方が、イギリスがEUを離脱する予定期日である2019年3月29日までに終わる可能性は極めて低いと示唆される。

発表から10日での国民投票

しかし、非常に厳しい時期内に国民投票を実施した前例が他国にないわけではない。

3年前、ギリシャは1週間ほどの準備期間で国民投票をとりまとめた。有権者はこの国民投票で、同国の経済危機に対する国際債権団の救済案を否決した。

しかし、国民投票をあまりに早急に実施してしまうと、「通常の手続きに従っていない」との印象を与え、有権者が最終結果を非合法なものとみてしまう可能性があると、レンウィック氏は語る。

たとえば、2015年のギリシャと似た準備期間で国民投票をすると、郵送による投票を受け付けたり、投票用紙に書かれる質問を評価したりする十分な時間の確保が許されないことになる。

リスボン条約50条で定められた期間の延長

イギリスはEUに対し、EU基本条約(リスボン条約)第50条で定められた離脱交渉期間を延長するよう求める可能性もある。リスボン条約は、メイ首相が第50条を発動した2017年3月29日から2年間を、離脱条件の合意に必要な期間として定めている。この期間が延長されれば、新たな国民投票を実施するための時間が増える。

しかし、英ケンブリッジ大学で欧州法を研究するキャスリン・バーナード教授によると、2019年3月29日という離脱期限を延長するあらゆる試案には、他のEU加盟27カ国の全会一致での支持が必要になる。

EUは、イギリスの離脱延期を認める可能性があると示唆している。ただし、たとえば総選挙もしくは新たな国民投票が実施されるなど、政局が変化した場合のみだという。すでに合意された離脱協定について、単に再交渉するための追加時間の確保は認められない。

また、期間延長にはイギリス議会の同意も必要になる。

<関連記事>

さらに欧州司法裁判所(ECJ)は先に、イギリスは他国の承認を得ずにリスボン条約第50条の発動を完全に取り消す権限を持つとの判断を下した

しかしこれは、ブレグジットの過程全体を中止できるという意味だ。単に延期するという意味ではない。

なので結局、イギリスが2度目の国民投票実施を望むなら、まずは第50条で定められた離脱期間の延長を模索することになるだろう。

そして、投票の結果に従って、イギリスは投票後に第50条の発動を撤回するかどうか決められる。

イギリスのEU離脱予定日後に国民投票を実施するのも代替案かもしれない。しかし、この案はかなり現実的な困難を引き起こしかねない。特に、既に離脱したにもかかわらず、イギリス国民がEUの一員であり続ける選択をした場合には。


(英語記事 Brexit: How could another referendum on leaving the EU work?

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-46590041

関連記事

新着記事

»もっと見る