テレ東・プロデューサーが語る「テレビサバイバル」

2019年1月2日

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小林史憲 (こばやし・ふみのり)

テレビ東京・プロデューサー

1972年、東京都生まれ。98年、テレビ東京に入社。報道局で警視庁記者クラブ、「ガイアの夜明け」、「カンブリア宮殿」などの番組ディレクター、プロデューサー。北京支局特派員。現在はコンテンツ事業局・海外ビジネス部副部長。ドラマやアニメをプロデュースしながら、海外へのコンテンツ展開を進めている。著書に『テレビに映る中国の97%は嘘である』(講談社)、『騒乱、混乱、波乱、ありえない中国』(集英社)。

 会議は紛糾した。政治部や社会部から猛反対の声が上がったのである。「国の行く末を決める政治の動きや、自分たちが暮らす社会が抱える様々な問題を伝えないというのは、報道機関としてありえない」というジャーナリスティックな使命感である。加えて自分たちの仕事、いや存在そのものが否定される感覚もあっただろう。

 これは、変革を求められる時に、多くの組織で見られる光景かもしれない。「経済のテレ東」というイメージが定着した今となっては、当時反対していたのは「守旧派」ということになる。ちなみに、入社以来3年間、警視庁記者クラブで殺人事件などを担当していた私も、反対の声をあげていた。守旧派である。他局に勝つための代案があったわけではない。竹槍でもミサイルに立ち向かうべし的な精神論だった。

経済ニュースに特化しきれなかったワケ

 結局、全てのニュースを経済にするのは時期尚早となった。反対の声が強かっただけでなく、「記者クラブをどうするか」という現実的な問題もあったからだ。

 日本には、首相官邸、各政党、国会、各省庁、都庁、警視庁、裁判所、日銀や東証などなど、多くの公的機関や業界団体に「記者クラブ」というものがある。大手メディアが中心となって構成され、加盟していないと記者会見に参加できないとか、参加できても質問できないなど、取材において不利益を被る。極めて日本的な、「村八分」で第三者を排除しようとする悪名高いシステムである。

 その是非はともかくとして、ニュースを経済に特化するとなると、多くの記者クラブは加盟している意味がなくなる。日常的に取材してもアウトプットしないのであれば、記者を置いておくのは無駄だからだ。だが、一度脱退すると再び加盟するのは難しいし、いくら経済に特化するといっても、大災害や世間を揺るがすような事件・事故が起きれば取材する必要がある。

 いや、記者クラブを維持することよりもっと大事なのは、政治や社会を取材する記者の育成である。日常の取材経験なしに、いざという時にフットワークよく動けるはずがない。

 記者クラブと取材経験。これらを放棄することはできず、厳しい環境に置かれながらも、夕方や土日は総合ニュース番組として続けることになった。

 こうした状況の中、テレ東らしさを求めて、これまでにない報道番組を立ち上げることになった。2002年4月にスタートした経済ドキュメンタリー番組『ガイアの夜明け』である。

「テレ東に経済番組が多いワケ(後編)」に続く

  
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