テレ東・プロデューサーが語る「テレビサバイバル」

2019年1月4日

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小林史憲 (こばやし・ふみのり)

テレビ東京・プロデューサー

1972年、東京都生まれ。98年、テレビ東京に入社。報道局で警視庁記者クラブ、「ガイアの夜明け」、「カンブリア宮殿」などの番組ディレクター、プロデューサー。北京支局特派員。現在はコンテンツ事業局・海外ビジネス部副部長。ドラマやアニメをプロデュースしながら、海外へのコンテンツ展開を進めている。著書に『テレビに映る中国の97%は嘘である』(講談社)、『騒乱、混乱、波乱、ありえない中国』(集英社)。

すべての道は「経済」に通ず

 それまで「ヒューマンドキュメンタリー」というジャンルはあったが、「経済ドキュメンタリー」はなかった。チームの誰も番組のイメージがつかめないまま手探りのスタートだ。やっていくうちに分かったのは、当然ながら人が経済を動かしているということだ。得体の知れない「経済」を追うのではなく、経済活動をしている「人」を追えば、自然と経済ドキュメンタリーが生まれる。その意味ではヒューマンドキュメンタリーでもある。

 では、「経済活動」とは何なのか? 経済というと難しく聞こえるが、町工場でのモノづくりも、スーパーでのアルバイトも経済活動である。さらには、それまで「政治」や「社会」に分類していたニュースも、視点を変えてみれば実は経済に関わっているというのも発見だった。

 例えば、「ニート」と呼ばれる就学・就労・職業訓練のいずれも行っていない若者を取材すると、「労働力人口」の問題があぶり出されてくる。「悪質リフォーム事件」の被害者を取材すると、日本の高齢者が莫大な財産をもち、それを運用せずに貯金している事実に気づく。アメリカがイラクに空爆した「戦争」の裏側を取材すると、為替の大きな動きを狙って世界中の投資家たちが勝負に出る国際金融の生々しい一面が見える。国の政策決定や選挙の裏側にも、必ず経済的な側面があった。

iStock / Getty Images Plus / metamorworks

 経済の門外漢が集まっていたことで、かえってネタの幅が広がった。専門家ではないからこそ、取材対象者に素朴な疑問をぶつけてそのままドキュメンタリーにすればいい。

 他方で、視聴者もまた日常的に経済活動をしている。ビジネスパーソンはもちろんのこと、主婦や学生だって買い物をすれば「消費」だし、新製品や新サービスに関心をもっている。実は「経済」は遠いものではなく、身近なものだ。そこを掘り下げれば、視聴者にも興味をもってもらえることがわかった。

 だが、番組はスタート当初、大苦戦した。サッカーの日韓ワールドカップと重なったこともあり、プライムタイムなのに視聴率1%台を出してしまったこともある。他局であれば「1クールであえなく終了」というところだが、そこはテレ東。元々、視聴率への過度な期待がない分、独自路線を大事にしばらく続けることになった。

 2年目に入ると放送枠が日曜から火曜に代わった。家族団らんの時間から、仕事モードの週前半に移ると状況が変わり始めた。5月に「潜入!北朝鮮 経済崩壊?“闇の隣国”」という回を放送すると、10.5%を記録したのだ。当時のテレ東にとっては、二桁の視聴率を取るというのは快挙である。内容は、日本向けの格安スーツの輸出を担当する北朝鮮の商社マンに密着したもの。情報がほとんどなかった北朝鮮の国内の様子を映像に収めたこと。そして、やはり経済的な視点で切り取ったことが新鮮だった。これを機に番組の認知度も跳ね上がり、番組は軌道に乗った。

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