立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年1月7日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

これからのベトナム不動産市場

 私が購入したコンドミニアムはホーチミン市の2区・タオディエンにある物件である。一応高級物件の部類であって、豪華なロビーやプール、ジムも完備しており、建物はしっかりしているし、見栄えも悪くない。当該地域は発展途上で、メトロ駅やショッピングモールなどの建設が進み、いずれまとまった商圏になる。

物件のプールエリア

 ただ、ホーチミンをはじめとするベトナムの不動産建設ブームは正直、盛り上がりすぎ。物件の供給過剰が大きな懸念だ。私が2015年7月に行われた外国人の不動産購入解禁の改正法施行と同時に買ったタイミングはまだしも、これから購入するとなると、キャピタルゲインは若干期待できるかもしれないが、全般的に賃貸相場が低迷しているため、インカムゲインはそれほど望めない。

 さらに、前述の通り、不動産売買の取引コスト(時間や労力)もかなりかかる。私の場合は物件の引き渡しが遅れ、一応契約通りの遅延損害金は払われたものの、その間の交渉やら何やらの手間を考えると、やはり取引コストや機会損失があったことは無視できない。

物件のロビー

 いまでも、ほぼ毎日のように、メールボックスにはベトナム不動産物件の最新販売情報が舞い込んでくる。一昔の中国に見られた光景ではあるが、ベトナムもいまやバブルの真っ最中というわけだ。友人からも度々、ベトナムの不動産投資について意見を求められたりする。

 まず、一言で言ってしまえば、いまのベトナムは不動産の作りすぎ。総量的に需要は確かにあることはあるが、中国市場ほどのスケールがないので、供給過剰のリスクはやはり消えない。

 次に、公共交通の開発が遅れている。ホーチミンのメトロ1号線の開通は、当初予定の18年から20年にずれ込んでいる。さらにメトロ2号線はもっとひどい。当初の計画では、16年着工19年完成、20年運行開始の予定だったが、土地収用の難航や設計調整の問題で、完成は24年にずれ込む見込みになっている。

 とはいっても、物件売買の相場は確実に上がっている。私が購入した物件もいまは購入時相場の1.5倍になっているようだ。今後メトロの開通や周辺商圏の整備で、物件相場の上昇はほぼ間違いないだろう。前述したように、インカムよりもキャピタルを狙うのなら、まだ少しチャンスがあるかもしれない。

 広域圏に射程を広げて、東南アジア全域の不動産投資からすれば、どちらかというと、消去法的にベトナムしか残っていないような気がしなくもない。特に最近の米中貿易戦争とTPPの発効によって、ベトナムにはかなり追い風が吹いている。中国からサプライチェーンの移出があるとすれば、アジア地域で唯一の受け皿になりえるのはベトナムだけだ。外資が急増すれば、不動産市場にとってもプラス要因になるだろう。

  
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