オトナの教養 週末の一冊

2019年1月10日

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本多カツヒロ (ほんだ・かつひろ)

ライター

1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/

 「痴漢をはじめとする性犯罪の加害者は、非モテで性欲の塊のような男」。「万引き犯は、生活に困窮した老人」……世の中には犯罪者に対するステレオタイプなイメージが存在する。実際のかれらの素顔とはどんなものなのか?

 痴漢や万引きを繰り返す人々のなかには行為・プロセス依存にあてはまる依存症の人たちもいる。かれらの治療に長年携わり、『万引き依存症』『男が痴漢になる理由』(共にイースト・プレス)を上梓した精神保健福祉士、社会福祉士で大森榎本クリニックの斉藤章佳氏に、痴漢や万引きを繰り返しやめられない人の実態や犯行に至るメカニズムなどについて話を聞いた。

(roberuto/iStock/Getty Images Plus)

――痴漢や盗撮、万引きを繰り返す人たちの治療をされています。どんな患者さんが多いのでしょうか?

斉藤:世間では性犯罪加害者について共有されているイメージがあります。たとえば、痴漢はモテない、女性に相手にされない男性、性欲の強い男性といったイメージです。しかし、クリニックに通う患者さんたちはまったく違います。痴漢の場合、一番典型的なのは、四大卒の既婚者で子どももいる会社員です。盗撮はさらに大卒の割合が高くなる傾向があります。

 万引きにしても、年金で細々と生活している高齢者が困窮しやむなくといったイメージがあるかもしれませんが、実は患者さんの7割が女性で、その中の大半が65歳以上の生活レベルが普通より上の人が多い。ですから、治療対象となる窃盗癖のある人は貧困や転売目的で万引きを繰り返しているわけではありませんし、犯行時にはしっかりと商品を買えるだけのお金を所持しています。そして執行猶予期間中の再犯など、重大な法的リスクがあるにもかかわらず対象行為に及びます。この不合理性がこの問題の本質で、それまで万引きとは無縁の人生を送ってきた人たちばかりです。

 性犯罪については、これまで1600人をこえる加害者の再発防止プログラムに携わってきました。世間の痴漢や万引き依存症者に対し、共有されているイメージと実態があまりにかけ離れているので、この2冊を通してそのイメージを覆したかったのです。

 また、特に性犯罪は加害者像だけでなく被害者像も実際と大きくかけ離れており、それがセカンドレイプの温床にもなっています。たとえば痴漢にあった女性に対し、派手で露出が多い服装だから狙われたんだ、隙が多いからや被害者から誘っていたんじゃないか、などといった誹謗中傷です。実際には、痴漢加害者は逮捕されないことが最も重要なので、そうした女性ではなく、警察に訴えでない泣き寝入りしそうなおとなしい女性を狙います。

斉藤章佳(さいとうあきよし)
大森榎本クリニック精神保健福祉部長(精神保健福祉士/社会福祉士)。1979年生まれ。大卒後、アジア最大規模といわれる依存症施設である榎本クリニックにソーシャルワーカーとして、約20年に渡りアルコール依存症を中心にギャンブル・薬物・摂食障害・性犯罪・虐待・DV・クレプトマニアなど様々なアディクション問題に携わる。その後、平成28年4月から現職。専門は加害者臨床。大学や小中学校では薬物乱用防止教育をはじめ、早期の依存症教育にも積極的に取り組んでおり、全国での講演も精力的に取り組んでおり、その活動は幅広くマスコミでも度々取り上げられている。 著者に『性依存症の治療』(金剛出版、2014  共著) 、『性依存症のリアル』(金剛出版、2015  共著) 『男が痴漢になる理由』(イースト・プレス、2017) 『万引き依存症』(イースト・プレス、2018)その他論文多数。

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