中東を読み解く

2019年1月10日

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米大統領補佐官を拒絶

 軍事アナリストの指摘のように、シリア政策の迷走がさらに深まる出来事が8日に起きた。米部隊が撤退した後に、その空白を埋める意向を表明していたトルコのエルドアン大統領がボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)の発言に激怒し、再び軍をシリアに侵攻させると恫喝する事態となったからだ。

 ボルトン補佐官はトランプ大統領が即時撤退を言い出した後、米国益に打撃を与えないような撤退を大統領に進言。米紙によると、昨年12月24日の閣議の席上、同補佐官が米国のシリアにおける達成目標を記した極秘メモを回した。目標としてはISの完全壊滅、イランの軍事勢力の駆逐、シリアの政治決着などが記されていた。

 補佐官は撤退をめぐる調整を行うためエルドアン大統領らと会談するべくトルコに向かい、その途中にイスラエルに立ち寄ったが、その際の発言に同大統領が反発した。補佐官は記者団に対し、米軍撤退の条件として、IS残党の完全掃討に加え、米国と連携してきた「シリアのクルド人勢力をトルコが攻撃しないと保証する」ことを挙げた。

 しかし、トルコにとってシリアのクルド人軍事組織「人民防衛隊」(YPG)はテロ組織として壊滅作戦を展開中の自国のクルド労働者党(PKK)の分派組織で、安全保障上の重大な脅威。一方、米国にとってはIS掃討作戦の主力を担わせてきた同盟組織だ。このYPGに対する姿勢の違いがトルコと米国との基本的な対立点である。

 エルドアン大統領は「(ボルトン補佐官の)メッセージを受け入れることはできない。彼は重大な過ちを犯した」となじり、いつでもシリアに侵攻してYPGを叩く用意のあることを表明し、8日に予定されていた補佐官との会談をキャンセルした。

 トルコのメディアによると、エルドアン大統領はその一方で、数日中にロシアのプーチン大統領と会談する見通しだ。米国との関係悪化に備えてロシアと接近して見せるという「エルドアン一流のしたたかさを示すもの」(ベイルートの消息筋)と捉えるべきだろう。

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