WEDGE REPORT

2019年1月11日

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矢沢彰悟 (やざわ・しょうご)

大学卒業後、スポーツカメラマンやライターとして活動するも、学生時代から携わっていたサッカーの指導者としての道を本気で志すため2015年、スペインのバルセロナに。現地の監督養成学校にて監督ライセンスを取得し、現地の少年から大人までの監督、 コーチを歴任する。 現在スペイン監督最高ライセンス取得のためのコースに在学中。

「将来とか目標なんて考えない」

 かつて私がこちらのとあるU14のチームでアシスタントコーチをしていた時、チームの選手に聞いたことがある。

 「君は何かサッカーでの目標とかあるの? プロとかになりたいの?」

 すると彼はこう答えた。

 「そんなこと考えたことないな。大事なのは今年を最高のシーズンにすること。そのために今週末の試合を全力で闘うこと。そのために目の前の練習に全力で挑むこと。大事なのは目標がどこか?ではなくて自分のベストの場所までいけるように日々努力することじゃない?プロなんてなるべき人はなるしね 」

 14歳の選手から出た言葉がこれだ。あまりに達観した返答に私も「……そうだよな」などと間抜けに答えるだけの始末だった。

”この試合のために”1週間トレーニングで準備をして試合に臨む

 ちなみにこの選手はカタルーニャ州内でもかなり能力がある方の選手で、将来はトッププロとまではいかなくても、セミプロくらいなら本気で狙えるくらいの才能はあった。その選手をもってして、「将来とか目標なんて考えない」というのである。

 スペイン語で“Que será será”(ケセラセラ)という言葉がある。日本でも多少馴染みのあるこの言葉は、一般的には「なるようになる」と訳されるが、本当の意味は「なるべくしてなる」。つまり今を全力で生きていれば先のことはどうにでもなるというニュアンスを持っている。

 「目標がどこかはとりあえず置いておいて、とにかく今目の前のことに全力で取り組む」

 その姿勢でいれば、たとえ目標に届かなくても、もしくは目標がなくても、常に前を向いていられる。なぜなら見るべきものは先ではなく、“今の自分”という確固たる存在だから。むしろその姿勢の方が、実は夢や目標により近づくことができる方法なのかもしれない。

 夢や目標を掲げることは美しい。だが、その美しさにたどり着くことができるのは 、“今を全力で生きた者”だけなのかもしれないと、スペインの選手たちを見て思い耽ったのである。

  
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