Washington Files

2019年1月14日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

EUはわが国の貿易上の敵であることは間違いない

 トランプ大統領はさらにその数日後には、米CBSテレビと会見した中で、NATOに続いてEU(欧州同盟)の存在に対しても牙をむき「ロシアもある意味では敵だし、中国は経済的敵だが、EUはわが国の貿易上の敵であることは間違いない」と断じ、欧州各国でさらに波紋を広げることになる。

 これに真っ向から反応したのは、まずマクロン仏大統領だった。

 同年11月6日、国内ラジオ局「Europe 1」番組に出演した中で、「これからの欧州はアメリカに頼ることなく、独自に防衛するだけの欧州軍(European Army)を創設する必要がある」と力説、さらにサイバー面での安全保障体制にも触れ「われわれは今後、中国、ロシアだけでなくアメリカからのサイバー攻撃にも備えなければならないだろう」とつけ加えた。トランプ氏の「EU敵視論」を受け「アメリカ敵視論」で一矢報いたつもりだった。メルケル首相も「欧州軍創設」構想には支持を表明した。

 しかし、トランプ氏が黙っているはずがない。ただちにその日のうちにツイターで、

「中国、ロシアと同様にアメリカを敵視するとは侮辱的だ。われわれは何のために欧州を防衛しているのか」とかみついた上で、その数日後、第一次世界大戦100周年記念式典出席のためパリを訪問した際に、エリーゼ宮殿での首脳会談でもマクロン大統領に直接、その真意をただした。

 これに対し、マクロン大統領は「欧州軍がアメリカを敵に回すことなどありうるわけがない」などと軽くいなした上で、トランプ大統領がNATO諸国に対する防衛分担増要求を強めていることに言及「あなたに直接言っておきたいのは、欧州各国が防衛のためにGDP2%支出をしたとしても、その結果、われわれがこぞってアメリカの軍事産業から武器調達することにはならないということだ」と切り返したという。

 トランプ大統領はメイ英国首相とも一時は険悪な関係に陥った。

 昨年7月、英国公式訪問に先立って同国のタブロイド紙「ザ・サン」とのインタビューで、混乱続きの英国のEU離脱問題に関連して「彼女(メイ首相)の離脱交渉プランは間違っている。ボリス・ジョンソン(“英国のトランプ”とも称される保守派政治家)のほうが首相になったら、うまく処理できるだろう」などと露骨な内政干渉とも受け取られない発言をしたからだった。

 他の新聞はもとより、テレビ、ラジオ含め英国メディアが一斉にこの発言に飛びつき、大騒ぎになったことに驚いたトランプ氏はその直後に、「彼女に対して別に他意はない。英国首相と私は良好な関係を維持している」と前言を撤回したが、それ以来、英国政界のトランプ不信は一段と深まってきている。

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