使えない上司・使えない部下

2019年1月17日

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「自分が何かを達成した」という満足感を得てもらいたい

 私は、障害者の方の素直さや正直さ、時には嘘をつくけど、すぐにばれてしまう、それを素直に認める。失礼な表現になっているかもしれませんが、落語に出てくる与太郎を見ているようで、何とも愛嬌あり、そんなかわいらしさが好きなのです。

 知的障害者の中には、突然、昔のことを思い出したりして大きな声で叫ぶ方がいます。健常者でも嫌なことを忘れることは難しいですよね。彼らの場合、過去にいじめられた記憶や怒られた出来事を忘れることが出来ずに、繰り返し思い出してしまうのです。障害者の多数が失敗体験の積み重ねで育ってきています。嫌な出来事は簡単には消すことはできませんが、たくさんの成功体験を積み重ねてもらうことで少しでも違ってくるのかなと思っているのです。

 9年前(2010年)にセンターを立ち上げました。当初は、主に多摩地区の特別支援学校を訪問し、一般就労できるか否か、微妙なところにいる生徒さんを就労継続支援 A型という雇用形態で採用しました。正式に採用する前に、2~3回の実習をしてもらったのです。単純作業で、立ち仕事が多いのですが、ほとんどの生徒さんがわき目をふらずに取り組みます。知的障害者の方は同じことの繰り返し、つまり、反復作業はよくできます。

 採用試験では、職業指導員がそのような様子を観察し、評価し、採否を決めさせていただきます。生徒さんにも、ここで働くことができるか否かを判断してもらいます。双方の考えが合致し、採用となると、平均で2年ほど就労し、それがいわば基礎訓練となります。その後、数年以内に一般就労としてほかの企業などに正社員や契約社員として勤務することを目標にしています。

 障害者の中には指導員の言い方を「キツイ」と受け止め、めげてしまう方もおります。すると、工場の機械が止まってしまうんですよ。それで、工場から私たちがお叱りを受けることがありました。その障害者の方にも言い分があるのでしょうから、私たちは丁寧に聞きます。

 ご本人に言わざるを得ないこともあるのです。「あなたはここで働くことを望んだのでしょう。将来は、一般企業で働きたいのでしょう?あなたが機械を止めた間にも、工場はあなたの賃金を払うんですよ」。誤解なきように言えば、叱るような口調ではなく、諭すような物言いです。指導員はパワハラなどの研修や講習を繰り返し受けていますから、心得ています。センターとして虐待防止研修と権利擁護の研修も徹底して行います。

 障害者の多くは、指導員の話をある程度は理解します。おそらく、自分のことを認めてほしいという思いを持っているのでしょうね。自分が思っているようなアンサーを返してほしいのでしょうけれど、そうとばかりにはなりません。そのようなときは、落ち込むことがあるようですが、これを乗り越えないと、一般就労はできないのです。

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