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2019年1月23日

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1993年に英北西部リヴァプールで2歳児が2人の10歳少年に誘拐・殺害され、イギリスに衝撃を与えた「ジェイムズ・バルジャーちゃん事件」を描く短編映画が、今年のアカデミー賞短編映画部門にノミネートされ、殺害されたジェイムズちゃんの母親が「吐き気がする」と憤慨している。

米映画芸術科学アカデミーは22日、アカデミー賞候補を発表。短編映画部門では、映画「Detainment」(拘束の意味)が候補になった。長さ30分の映画は、当時10歳のロバート・トンプソン少年とジョン・ヴェナブルス少年(2人とも2011年に釈放され改名)がショッピングセンターでジェイムズちゃんをさらう前後の様子や、警察記録をもとに、逮捕された少年2人の事情聴取を再現している。

ジェイムズちゃんの母、デニース・ファーガスさんは、アカデミー賞候補が発表されると、「映画と呼ばれているこれが作られて、今度はオスカー候補になってしまい、私がいかに吐き気がするほど不快で、憤慨しているか、言い尽くせない」とツイートした。

ファーガスさんはさらに、「ジェイムズの家族に連絡せず許可も得ないでこういう映画を作るだけでも問題なのに、ジェイムズがむごたらしく殺されるまでの数時間を子供に再現させて、私や家族に同じ体験をくりかえさせるなんて! 私がこれまで散々声を上げて、この映画と呼ばれてるものを取り下げるよう要求してきたのに、これがオスカー候補になるなんて、アカデミーは私の気持ちだけでなく署名に賛同してくれた9万人も無視した」とツイートした。

https://twitter.com/Denise_fergus/status/1087717531782184960


映画はアイルランドの映画監督ヴィンセント・ラム氏によるもので、ラム氏はこれまでに、ファーガスさんへの連絡が遅れたことや、「この映画が不快にさせたかもしれない」ことについて謝罪している。

アカデミー賞候補が発表されると、アイルランドのマイケル・D・ヒギンス大統領は、「Detainment」の関係者を含め、アイルランドからオスカー候補になった全員を祝福するツイートを投稿した。

https://twitter.com/PresidentIRL/status/1087718690475442177

ファーガスさんは昨年12月、英ITVの番組で、ラム監督が自分のキャリアのために事件を利用していると思うと話し、米映画芸術科学アカデミーには受賞対象から外すよう要求した。

「本当に対象から外して欲しいと強く願っている。オスカーを受ける資格などないと思うし、他人の悲しみを利用して自分のキャリアに役立てようとしているだけだ」とファーガスさんは話していた。

さらにファーガスさんは番組で、「ジェイムズの両親に相談もなく作られたのがそもそもの間違いだと思うので、多くの人にボイコットしてもらいたい」と述べた。

ジェイムズちゃんを殺害した少年2人は実名報道され、通常の刑事裁判を経て最低禁錮8年の実刑判決を受けた。

ファーガスさんは量刑が軽すぎると長年にわたり活動を続け、最近では「I Let Him Go」(私が手を放してしまった)という回顧録を出版している。

映画のラム監督は、ファーガスさんたち遺族が家族が映画への反対を表明するより先に、BBCに対して「犯人の少年たちを人間として描く映画を(遺族が)すんなり受け入れられるとは思わないが、なぜこの映画が作られたのかを理解してくれると期待したい。遺族をさらに悲しませるつもりなど、もちろんなかった」と話していた。

「この映画を作ったのは、なぜこの2人の10歳少年がこれほど恐ろしい事件を犯すに至ったか、理解しようとするためだ。原因を理解しなければ、同じようなことが将来また起き得るので」と、監督は述べていた。

その後にファーガスさんが映画を最初に批判した際には、監督は「バルジャーさん一家にとても同情しているし、不快にさせたとしたら本当に申し訳ない。後から振り返れば、この映画についてファーガスさんに事前にお知らせしなかったのを申し訳なく思う」、「この映画は金銭的利益のために作ったものではなく、製作に関わった誰一人として、この映画で利益を上げようとは思っていない」ととコメントを発表していた。

(英語記事 Oscars 2019: James Bulger's mother 'disgusted' over nomination

提供元:https://www.bbc.com/japanese/46968734

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