前向きに読み解く経済の裏側

2019年1月28日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 今回は『老後破産しないためのお金の教科書』の著者である塚崎が、高齢者の資産運用について注意点等を解説します。

 日本では、年齢別に見ると高齢者が圧倒的に多額の金融資産を持っています。もちろん個人差は大きいですが、年功序列賃金なので若い時は貯蓄額が小さいこと、サラリーマンには退職金があるので退職前後で金融資産額が大きく異なること、などが理由でしょう。そこで今回は、高齢者の老後資金対策について考えてみましょう。

(AndreyPopov/Gettyimages)

預金は安全資産ではないので、分散投資が必要

 一般に高齢者はリスクを嫌う保守的な運用をすると言われています。加えて日本では、昔は「株に手を出す」などと言われて「株を買うことはバクチであって、まっとうな人間は近づかないほうが良い」と多くの人が考えていたわけですから、そうした文化の中で育ってきた高齢者たちが、株等を持っていないのは自然なことでしょう。高度成長期には政府が「貯蓄から投資へ」などと旗を振ることなど考えられなかったですから。

 有識者の中にも、「高齢者は安全資産のウエイトを高めるべきだ」という人は少なくありません。「若い時に投資をして失敗しても、長い人生でたくさん働くとか節約するとかして取り返すことが可能である。しかし、高齢者が投資に失敗すると取り返せないから、高齢者はリスクを抑えるべきだ」ということのようです。

 しかし、筆者はそうは思いません。インフレを考えると預金は安全資産ではないからです。「株式や外貨は値下がりリスクがあるので危険資産である」というのは正しいですが、預金もインフレによる目減りリスクがあるので、同様にリスク資産なのです。

 3種類のリスク資産をどういう割合で持つのが「望ましい分散投資」なのかは、年齢とは無関係です。若い時にインフレが来て預金が目減りしたら、多く働いたり倹約したりすれば良いのですが、全資産を銀行預金で持っている高齢者はインフレで預金が目減りしても取り返せません。

 「過去何十年もインフレなど来ていないのだから、今後も来ない」と考えるのは、バックミラーを見て運転するようなもので危険です。インフレが来るか否かはわかりませんが、来ても困らないように対策をするのが資産運用でしょう。

 第一に、日銀がインフレにしようと頑張っているわけですから、それがいつか成功するかもしれません。氷に熱を加えていくと、ある時から突然温度が上がります。それと同じことが起きるかもしれません。第二に、確率は低いと思いますが、大災害で東京や大阪や名古屋が壊滅したら、超インフレになるでしょう。そうしたリスクにもある程度は備える必要があるのです。

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