赤坂英一の野球丸

2019年1月30日

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WBC2017(USA TODAY Sports/Reuters/Aflo)

 東京オリンピックを来年に控え、プロ野球界では侍ジャパンのメンバー選考が大詰めを迎えている。シーズン開幕前の3月9、10日には、京セラドーム大阪でメキシコとの強化試合が行われる予定。山中正竹・強化本部長によると、「もう少し見てみたい(当落線上の)選手は、これが(侍ジャパンに選ばれる)最後のチャンスになるかもしれない」という。

 出場が予想される若手有望株、日本ハム・清宮幸太郎、ロッテ・安田尚憲ら、元甲子園のスターたちが活躍すれば、オリンピックの前景気を盛り上げるには持って来いだ。日本シリーズ終了後の11月2日~17日には、五輪の前哨戦とも言える国際大会、世界上位の12カ国が参加する〈WBSC(世界野球ソフトボール連盟)プレミア12〉も開催される。

 この大会では予選(オープニングラウンド)を勝ち抜いた6カ国が、11月11日から東京ドーム、ZOZOマリンスタジアムで行われる決勝トーナメント(スーパーラウンド)へと進出。同月17日の決勝の舞台は東京ドームで、全国の野球ファンが注目するのは必至。稲葉篤紀監督が率いる日本の侍ジャパンは、優勝が〝国家的至上命令〟となっている。

 しかし、それでは、肝心の選手、侍たちのモチベーションは上がっているのか。ファンとしては「何が何でも優勝するぞ」と燃えていてほしいところだが、これが意外にそうでもない。というより、「できることなら強化試合もプレミア12も出たくない」とぼやいている主力選手が少なくないという。

 「そりゃそうでしょう。ウチでは年俸の高い大物選手ほど、『ケガでもしたら大変だから』と侍ジャパンに選ばれるのを渋っているのが実情です」と、あるセ・リーグ球団の関係者がこう証言する。

 「プロ野球選手にとって、一番大切な仕事は何と言っても本番のペナントレース。チームの主力なら誰もが、3月29日の開幕戦にコンディションをピークに持っていくよう調整をしている。そこへ開幕20日前のメキシコ戦に出場しろと言われたら、それだけ大急ぎで仕上げなきゃならない。試合に出たら出たで、レギュラーシーズン並みの全力プレーを要求される。それでケガでもすれば、本番のシーズンで満足なプレーができなくなる。あげく、今オフの契約更改でガクンと給料を下げられたらかないませんからね」

 そんなワガママな怠け者はごく一部だろう、と思われるかもしれないが、さにあらず。現に労働組合・プロ野球選手会の昨年12月6日の定期大会では、侍ジャパンの現状について疑問や批判の声が続出。「今年のプレミア12、来年の東京五輪、再来年のWBC(ワールドベースボールクラシック)と、約1年4カ月の間に3つの国際大会に出場する選手の負担軽減と補償を球団側に求めることを最重要課題とする」と決議されているのだ。

 選手会長の巨人・炭谷銀仁朗は、「選手が安心して国際大会に臨めるようにするべき。選手はリスクを背負っていくので、球団にもリスクを背負ってほしい」とコメント。推定年俸6億5000万円の副会長、巨人・菅野智之も、「(3大会も続くと)正直つらいというのが個人的意見です。そういう選手は(今年3月のメキシコ戦のような)強化試合に招集しないとか、細かいところまで決めてほしい」と、現状が〝過重労働〟になっていると率直に指摘している。

 国際大会に出場する選手には1人300万円の手当てが出る。しかし、「その程度の報酬では引き合わない。とくに海外の試合に参加している選手は、『出るたびに赤字になった』ともらしている」と打ち明けるのは、自身もWBCなどに出場した経験を持つプロ野球OBのひとりだ。

 「ベテラン選手になれば、ちょっとしたケガやアクシデントが引退につながりかねない。だから、海外の遠征先にも信頼している個人トレーナーを連れて行くんです。彼らの渡航費や宿泊代は、球団もジャパンも出してくれないから、ぼくたち選手の持ち出しになる。

 トレーナーにはいつも自分の状態を正確に知っておいてほしいので、行く先々で一緒に食事をしたりもする。そこに、同じ日本代表(侍ジャパン)の若い選手やスタッフを呼んだりすることもある。おかげで、出て行く金ばかり増えるわけです。そこまでしなければいいと言われるかもしれませんが、日本代表での立場もあるし、自分の身は自分で守らなきゃならないし、金を出し惜しみしてケガをするよりはマシだと思ってしまうから」

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