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2019年1月27日

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イノウエヨシオ

株式会社ファンドレックス取締役COO(最高執行責任者)。共益投資基金ジャパン代表理事。NPOや公益法人向けのファンドレイジング研修では年間3000名以上に講演。地域の課題解決のための取り組みを全国各地で行うと共に、チャリティイベントの企画や災害対応の研修などで高い評価を得ている。資金的支援に経営的支援を組み合わせた新しい資金循環にも取り組んでいる。

 平成が終わり、新しい元号が始まるまであと3カ月あまり。この時期、雑誌の見出しやTV番組の特集、ネットの企画記事でも1/17には阪神・淡路大震災(1995・平成7年)、そして3/11東日本大震災(2011・平成23年)と過去の大災害の特集などにふれる機会が多くなってくる。そこから目を背けてはいけない。関心を風化させてしまってもいけない。時代の変わり目であるからこそ、過去を紐解く振り返りの中で、それらをこれからの備えとして活用していくことを勧めたい。

(Ja_inter/Gettyimages)

 見方を変えると先人が生き残った側だったからこそ、今の自らの命に繋がっているのだと考えることもできる。このようにして歴史を学び、未来志向で活かしていくことはとても大切に思える。国と国との闘いの歴史であった戦争体験を語り部から受け継ぎ、その悲惨さから不戦の誓いを心に結ぶように、自然との闘いであった災害被災者の証言は悲惨であったからこそ、二度と起きないように務めていくのが「聞いてしまった」ものたちにとっての義務であるように思う。

先人に学ぶ防災

 『武士の家計簿』の原作者やテレビの歴史コメンテーターとして著名な磯田道史さんの『天災から日本史を読みなおす~先人に学ぶ防災』(中央公論新社刊)は朝日新聞に連載されていた「磯田道史の備える歴史学」を加筆修正したもので新書としては異例の20万部を超えるヒット作。2度の大地震で秀吉が天下統一のスピードをゆるめ、徳川家康への追い込みをとりやめたことや、災害対応のまずさから退陣に追い込まれた藩など、日本各地の災害によって歴史の転換点となってしまった事例の紹介や、津波が押し寄せた痕跡をたどり、その脅威の規模を伝えたり、古文書に地震の際にため池が氾濫した記述があり現在、宅地になっているのではないかと警鐘を鳴らしたりと、古文書などに秘められた災害の歴史から具体的に活かすための知恵を取り出して示してくれている。

  • 過去に地震や津波、大水がでたところは過去にあったからといって今度は大丈夫だということはない。過去に降りかかった災害が今起これば、どう対処するかをリアルに想像力を発揮して対処を考えておくことが大切
  • 大潮がきたら山に入れ、井戸の水からの異状は予兆として備えよ、など地域の知恵を活かす
  • 避難する際には率先避難者は「大津波が来る、○○へ逃げよう」と周りへ聞こえるように逃げていくことが大切。
  • 自分の命は自分で守る。津波でんでんこ(津波が来た時には家族を信じてちりじりばらばらに高台に逃げること)、危機の直感を活かす。
  • 災害は過去の例を超えることもある。災害時には、安全を過信せず、目の前の現実に対処する。

今のあたりまえは少し前までは当たり前でなかった

 古文書にある過去の知見に加えて、今の知恵として活用できるものとしては、インターネットを基盤としたICT技術が挙げられる。東日本大震災では自分たちのもっているスキルで何とかサポートできないかと技術者たちが知恵を絞り、行方不明の方を探す仕組み、どこの避難所にいるかを検索するしくみ、どこでどんな物資が不足していて誰が提供できるかをマッチングできる仕組みなどもどんどんと作られていった。LINEのしくみも震災を契機として一気に加速したと伺っているし、ネット環境が乏しい時だったので、安否が少なくとも早くわかるように「既読」の機能もつくられたという。過去に学ぶが、そこに立ち止まっていないで未来を起点として見つめ直したらという視点も持っておきたい。

 自分事で恐縮ながら筆者がCOO(最高執行責任者)を務めるファンドレックスは社会的企業やソーシャルビジネスを資金面からサポートする日本初のファンドレイジング専業のコンサルティング会社として10年をこえたが、10年前に創業した頃には寄付を集めるツールといったものは何もない時代であった。

 例えば、今は当たり前にインターネットで地震や災害が発生するとすぐさまに被災地へ寄付を行っているが、インターネットはWindows95(日本で本格化したのは1996・平成8年)からだし、そのベースとなっているクレジット決済では、そもそもクレジットで寄付することができなかった。日本のネット募金の草分け的存在である、ヤフージャパンのヤフーネット募金はスタートして15年が経過しているが当初はパソコン用の壁紙を購入するなどして、寄付付き商品としての導入から始まっていった。それらのしくみが整備されて、特に東日本大震災を経て日本の寄付市場では個人寄付が拡大していっている。

「災害に備えるには年末が最適なワケ~欲しい未来について考え見よう」平成最後の年の瀬は「安心を寄付する」

 これらも、時代の契機とテクノロジー進化が歩みをそろえたからこそだと思われる。また今では、個人や企業、創業予定者やグループなど多彩な担い手が周囲にネット上での資金調達を呼びかけるクラウドファンディングも2011年(平成23年)から本格化したし、ふるさと納税も開始して10年でしかない。アイフォーンが2008年(平成20年)に発売されているから、実はスマホ時代はこの10年でしかない。今はもうすっかりと馴染んでしまって当たり前になってしまい、それがなかった時はどうだったかが思い出せないぐらいだが、たった10年前であっても当たり前でなかったことがあるのだ。

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