2024年4月19日(金)

ちょっと寄り道うまいもの

2011年10月6日

 とどめを刺された想いだったのが、最後の御飯。たっぷりとハマグリの旨みが加わった鍋のおだしを御飯に、と言う汁かけ御飯。これにコショウをかけていただく。

七里の渡跡には、往時の桑名を象徴する蟠龍櫓(ばんりゅうやぐら)が復元されている

 江戸時代の『名飯部類(めいはんぶるい)』という本に、コショウ飯というものが登場するのを思い出したが、その極致という味わい。濃厚なだしの風味にコショウの刺激が快く響く、最強の汁かけ飯。

 腹ごなしに市内を歩く。木曽川など、いくつもの川が混じり合うように集まる河口。豊かな汽水域。広がる広大な干潟。なるほど、この地形が美味しいハマグリを育むかと思わせる。

 橋を架けることが許されなかった江戸時代、七里の渡(わたし)が出る桑名は交通の要衝であったから、宿場も発達し、名物の食べ物も生まれたのだろう。散歩の途中で見つけた、「はまぐりプラザ」の展示などから、そう納得させられる。

 訪れて食べるのが、焼きハマグリなら、お土産となったのが、「しぐれ煮」である。いまも、製造販売している店が、市内にはいくらもある。「しぐれ煮」という看板が立ち並ぶ。店頭でハマグリを焼いて、食べさせるところもある。カジュアルな楽しみ方も出来る。

 あるいは、桑名から少しばかり電車に揺られて亀山へ。駅前のお店、「いとう弁当店」ではそのしぐれ煮の茶漬けという珍しい駅弁も作っている。残念ながら、ハマグリのしぐれ煮だと駅弁の料金では収まらないということで、アサリを使っているが、茶漬けの駅弁という珍品が味わえる。

 言い忘れた。旬の話。ハマグリの旬は初夏である。盛夏の頃、産卵を迎えるので、その直前がもっとも豊満になるのだ。産卵後、また徐々に豊かな味わいを取り戻していく。

 これからの鍋の季節に味わうか、あるいは旬を目指すか。旬の時期はリピーターが翌年の予約をしていくほどの人気なので、早めに決断された方がよろしいかも。


■日の出
関西本線桑名駅から徒歩約15分
三重県桑名市川口町19
☎0594(22)0657
営業時間/11時30分~14時(季節により営業)、17時~22時 ※要予約
定休日/水曜(第3水曜は営業し前々日の月曜を休業、今年の12月は日曜定休)
■いとう弁当店
関西本線・紀勢本線亀山駅下車すぐ
三重県亀山市御幸町182─2
☎0595(82)1225
営業時間/8時~21時30分

 

◆ 「ひととき」2011年10月号より

 

 

 

     

 
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