立花聡の「世界ビジネス見聞録」

2019年1月27日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

凡庸な社員は去れ!

 メディア取材は対外的な宣伝だが、メールは任氏が昨年(2018年)10月と11月に行われた社内経営会議での講話であった。幹部向けの講話を全社員に配布することによって、トップが直接に訴える切迫感がひしひしと伝わってくる。

「これからの数年、全体的な情勢は想像していたほど楽観できるものではない。われわれは苦しい時期に備え、様々な準備をする必要がある。5Gは4Gのような破竹の勢いをもたないだろう。18万人もの(ファーウェイ)従業員を養っていくために、毎年の賃金給料、賞与配当予算は300億ドルを超えている。これだけの食糧を生み出せなかったら、分配できる原資が不足する」

「こういう状況なのだから、どうすればいいのか?一つひとつのポストは食糧の多産・豊作と土づくりに照準を合わせる必要がある。照準が合わなかったら、その仕事の量を削減したり、あるいは一部のポストをカットしなければならない。(利益を生む場所への)資源の集中投下である。同時に、一部凡庸な従業員をリストラする必要もある。人件費の削減は欠かせない」

 深刻な状況である。10月と11月の経営会議での講話だったことから逆算すれば、米中貿易戦争が進み、ファーウェイも深刻な危機感を持ち始めた頃でもあった。12月1日の孟晩舟副会長の逮捕に先立って、任氏はすでに予感をしていたような雰囲気だった。さすが軍人出身の経営者である任氏の嗅覚は鋭いものだった。

 利益を生み出せないポストをどんどんカットする。経営合理化の一環として理解できなくもないが、「凡庸な従業員」がクビ切りの対象だと、そこまで明言するのは日本人にとって想像を絶することだ。日本人経営者がこんなことを言ったら、直ちに激しい世論の指弾を浴び、下手すると即時辞任に追い込まれるのがオチだ。

 経営について、社会主義国である中国の企業は日本企業よりも、はるかに資本主義的である。その反面、日本の温情経営はいかにも社会主義的ともいえる。

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