家電の航路

2011年10月4日

»著者プロフィール
閉じる

前田 悟 (まえだ・さとる)

金沢工業大学客員教授

(株)SOW他複数企業特別顧問。1951年岡山県生まれ。ソニーで、世界初の無線TVエアボード、ロケーションフリーTVなどを開発。07年にケンウッドに移籍し、2008年JVC KENWOOD Holdings㈱執行役員常務に就任、2011年6月退任まで技術戦略、新規商品開発を担当する。2010年7月から、金沢工業大学客員教授、現在は複数企業の特別顧問も行っている。

 大震災が発生した時、固定電話、携帯電話ともに被災地から離れた東京でも、ほとんど繋がらなくなった。だが、インターネットには問題なくアクセスできたことに驚いた。やはりネットワークの特徴であるトラフィック、迂回路などがしっかりしていたからだと思う。

 被害を受けた人たちの一部が、被災地から離れた場所に避難された。避難を余儀なくされたこうした方々は、地元の状況を引き続き見たい、知りたいと思われているだろう。しかし、地元のTV局やラジオ局の放送は、その土地でしか見聞きすることができない。

 被災地では、コミュニティFMラジオ局が開設されて、情報を流し始めていると聞く。だが、これもFM局からの電波が届く範囲でだけ受信可能で、電波の届かない避難地では聞くことができないし、そもそも、画像などを配信することはできない(しかし、インターネット放送では可能)。

 大震災の後、家電メーカーも乾電池、ラジオ、無線機、携帯LEDなどを被災地に提供した。私も一員として加わっている「新メディア・プラットフォーム協議会」(金沢工業大学主催)では、「離れたところからでも地元の情報を見聞きしたい」という被災者の方々の要望に応えるべく、実用化実験をしているあるシステムと、その端末を提供することを検討している。

被災地と避難所をネットとTVで繋ぐ

 そのシステムは、サーバー類とインターネットに接続された端末とからなる。1ラジオ放送+画像情報2専門チャンネルとして動・静止画像+音声情報を提供し、それをTVで見ることができる(必要であれば、モバイル端末で見ることも可能)というものだ。要するに、TVとインターネット環境があれば、被災地だけでなく、離れた避難地でも被災地のラジオ局の放送や、種々の情報を見ることができる。

 例えば、地元に残っておられる方や、ボランティアの方が、ビデオカメラなどで撮った映像、または必要な情報を画像で流す。その情報はどこの避難地でも受信が可能だ。また、放送ではなく通信であるため、簡単な逆方向の情報を流すことも可能だ。もちろん、これらはパソコン(PC)でもできることではあるが、TVで見ることができるので、お年寄りなどPCに不慣れな方にとっても利用が容易だ。

 協議会には種々の業種(ラジオ局、レコード会社、TV局、コンテンツ提供会社など)からの参加があり、ファッションTV、レコード会社からの新人アーティストなどのコンテンツが実験として提供されている。これらは、被災地の方にもひと時の喜びになるのではないかと思う。

 今、提供すべきものとして、サーバー、新メディア・プラットフォーム協議会準拠の端末、ディスプレイ、ビデオカメラなどを検討している。こうしたことは、日本の家電メーカーにしてみれば、容易にできることの一つではないかと思う。

 近い将来、ネット社会が進化していけば、放送局が独占するチャンネルではなく、このようにコンテンツそのものが主体になるだろう。

◆WEDGE2011年5月号より


「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
週に一度、「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る