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2019年2月1日

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和田大樹 (わだ・だいじゅ)

オオコシセキュリティコンサルタンツ アドバイザー/清和大学講師

日本安全保障戦略研究所(SSRI)研究員、日本安全保障・危機管理学会主任研究員などを兼務。専門分野は国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論。日本安全保障・危機管理学会奨励賞を受賞(2014年5月)、著書に「テロ、誘拐、脅迫 海外リスクの実態と対策」(同文館2015年7月)、「技術が変える戦争と平和」(芙蓉書房2018年9月)など。研究プロフィールはこちら

 アフリカ東部ケニアの首都ナイロビで、1月15日午後、5つ星の高級ホテル「デュシットD2」と外資系企業などが入る複合施設を狙ったテロ事件が発生し、これまでに21人が亡くなった。実行犯たちはホテルのロビーで自爆したり、逃げ惑う人々に向けて無差別に銃で乱射したという。犠牲者の中にはケニア人のほか、米国人や英国人、オーストラリア人など複数の外国人も含まれ、実行犯たちが外国人を意図的に狙っていたことが想像できる。

 事件後、ケニアの隣国ソマリアを拠点とし、国際テロ組織アルカイダに忠誠を誓うイスラム過激組織「アルシャバーブ(Al-Shabaab)」が「トランプ政権によるイスラエル・エルサレムの首都容認への対応であり、ザワヒリ指導者からの指示に従った」との犯行声明を出した。

 今回のテロ事件で、幸いにも邦人の被害はなかった。しかし、同複合施設の敷地内のオフィスビルには複数の日系企業が入っており、入居している日系企業の駐在員の人々は銃声を聞いて慌てて逃げたという。今回の事件は、テロの脅威は海外邦人にとっても決して対岸の火事ではなく、いつテロに巻き込まれても不思議ではないことを改めて示すこととなった。

iStock / Getty Images Plus / ronniechua

犯行声明を出した「アルシャバーブ」とは

 アルシャバーブについて簡単に説明すると、ソマリアを拠点とするイスラム過激組織で、2007年1月の誕生以降、ソマリア政府軍やアフリカ連合(AU)の外国部隊などを狙ったテロを繰り返している。また、2010年1月にアルカイダへ忠誠を誓い、外国でもテロを実行している。2010年7月、南アフリカのサッカーワールドカップ決勝戦最中、アルシャバーブはウガンダの首都カンパラにあるパブリックビューイング会場で大規模なテロを実行し、74人が犠牲となった。

 また、ケニアでは2013年9月のナイロビショッピングモール襲撃テロ(60人以上死亡)、2015年4月のガリッサ大学襲撃テロ(148人死亡)のように大規模なテロ事件を起こしている。2013年9月の事件では多くの欧米人が犠牲となり、今回発生したテロ現場とも近い距離にある。

 アルシャバーブはソマリア軍などの掃討作戦によって支配地域を失い、組織的に弱体化したとみられているが、依然としてソマリアを中心に断続的にテロを起こしており、ケニア国内でも一定の勢力とネットワークを保持しているとみられる。

いまだ燻るイスラム過激組織による「テロの脅威」

 今日、「イスラム国(IS)」という言葉をテレビや新聞から聞くことは殆どなくなったが、だからといってその種の脅威が治まったわけでは全くない。そう認識することは非常に危険なことだ。

 例えば、米国にある戦略国際問題研究所(CSIS)は昨年11月、今後の国際テロ情勢の行方について1つの報告書を公開した。それによると、アルカイダやISなどのイスラム過激組織によるテロの脅威は依然として残っており、その関連組織の戦闘員や支持者たちを含め、現在でも中東やアフリカ、南アジアや東南アジアなど各地に10万人~23万人もいるとされる。また、国別ではシリアに4万3650人~7万550人、アフガニスタンに2万7000人~6万4060人、パキスタンに1万7900人~3万9540人いるとされ、ISなどに関連するイスラム過激組織の数は、9.11テロ時の約1.8倍に当たる67組織も存在するという。

 もちろんこの全員、全組織が常に外国人を狙うテロ攻撃を積極的に仕掛けているわけではないが、依然として邦人が犠牲となるテロのリスクは残っていることを同報告書は示唆している。

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