2024年4月26日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年2月4日

「上級スタッフ」と「高位の幹部」は誰か?

 起訴状には、ストーン被告がやりとりをしていたトランプ陣営の2人の幹部が匿名で記されています。「上級スタッフ」と「高位の幹部」です。

 一部の米メディアによると、上級スタッフはすでに有罪となっている元選対本部長ポール・マナフォート被告の部下で政治コンサルタントのリック・ゲイツ被告といわれています。仮にそれが事実であれば、高位の幹部とは一体誰なのでしょうか。

 率直に言ってしまえば、長男のドナルド・トランプ・ジュニア氏ないし娘婿のジャレッド・クシュナー氏が有力でしょう。ただ、トランプ大統領本人である可能性も捨てきれません。

 いずれにしてもモラー特別検察官は、高位の幹部を把握しており、その人物に焦点を当てて捜査をしているはずです。仮に高位の幹部がドナルド・トランプ・ジュニア氏で、モラー特別検察官が同氏を起訴できれば、ロシア疑惑は急展開します。

 このとき、トランプ大統領は長男に恩赦を出すのか決断を迫られます。最終報告書が出るまでに、高位の幹部を起訴できるのかがカギになります。

報告書に対する懸念

 以前、ウィタカ司法長官代行は、モラー特別検察官の捜査がトランプ大統領のビジネス取引まで拡大したと米メディアが報じたとき、「行き過ぎた」「魔女狩りだ」と捜査を批判しました。さらに、トランプ大統領がジェームズ・コミー前連邦捜査局(FBI)長官を解任した際には、同大統領の決断を擁護しました。議会民主党は、ウィタカ司法長官代行がロシア疑惑の捜査に関与している点に不快感を抱いています。

 そのウィタカ司法長官代行は、モラー特別検察官によるロシア疑惑の捜査がかなり進展している点を危惧し、捜査を終了させるために、同検察官に圧力をかけたとみることができます。

 議会民主党はトランプ大統領から次期司法長官に指名されたウィリアム・バー氏に対しても懐疑的です。というのは、バー氏も過去にモラー特別検察官の捜査を批判しているからです。

 トランプ大統領には、ウィタカ司法長官代行とバー次期司法長官を使って、モラー特別検察官に対する監督強化を図る意図があります。バー氏が米議会での承認を経て司法長官に就任すると、モラー特別検察官は同氏に最終報告書を提出することになります。

 野党民主党議員の中には、バー氏が報告書を検閲して修正するのではないかと警戒感を強めている議員がいます。ソフトな表現に変えたり、トランプ大統領に不利な文章の一部を削除するなどの行為が可能になるからです。

 バー氏が修正を加えないで最終報告書を米議会に提出し、有権者に公表するのかが焦点になります。もしホワイトハウスが米司法省に圧力をかけ、同省が報告書の書き換えや手直しをした場合、結局、ロシア疑惑の最終報告書は「フェイク・レポート(偽の報告書)」になり得るのです。

  
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