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2019年2月6日

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矢沢彰悟 (やざわ・しょうご)

大学卒業後、スポーツカメラマンやライターとして活動するも、学生時代から携わっていたサッカーの指導者としての道を本気で志すため2015年、スペインのバルセロナに。現地の監督養成学校にて監督ライセンスを取得し、現地の少年から大人までの監督、 コーチを歴任する。 現在スペイン監督最高ライセンス取得のためのコースに在学中。

弱点を克服するのではなく、「隠す」

スペインでは価値観として、“弱点を克服する”ことより、“長所を最大限活かす”ことが優先される。

 例えばスペインでは監督がチームを受け持つ際に「プレーモデル」と呼ばれるものをまず考える。簡単に言えば自チームがどのようなプレーをするか?という指針や方法をまとめたもので、多くの監督が口を揃える基本コンセプトがある。

「チームの長所を最大限活かし、短所を最大限隠すようにプレーする」

 仮に足が遅い選手がいるなら、その選手はあまりダッシュで走らないで済むようなポジションにしたり、その隣に速い選手を置いてカバーしたりと、弱点は克服するのではない。隠すのだ。

 なぜなら完璧な選手、完璧なチーム、完璧なプレーなどどこにも存在しない。だからこそ、できないことや短所は他の何かで補って隠せばそれでいい。誰もができることとできないこと、長所も短所もいくらでもあるのが当たり前なのだ。

 昨年私はあるU16のチームの監督をしていたのだが、ある日練習で選手同士が1対1でスピードを競うような形の練習をしたことがある。その途中、テクニックは優れているものの走るのが遅い選手が私に言ってきた。

「俺は足が遅いからこの練習は好きじゃないしやりたくない。でも俺はテクニックはある方だからそれでチームには貢献できるだろう?」

 要するに自ら足が遅いという弱点をはっきり口にした上で、それを向上させる気がない、と言ってきたことになる。

 彼を受け持っていた監督として保証するが、決してこの選手は向上心や練習態度そのものに問題があるわけではない。チームに貢献したいという気持ちも間違いなく本物だ。

 その時は「この練習での勝敗でスタメンを決めたりということはないから、最後まで続けなさい。その代わり君の気持ちもわかるから、君と同じくらいの足の速さの選手との対決になるように順番を整える」ということで折り合いをつけた。練習後にふとこれが日本人の選手だったらどうだったろうか?と考えた。おそらく足が遅いという弱点克服のためのトレーニングに励むのではないか。

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