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2019年2月4日

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ナワル・アル・マガフィ、BBCパノラマ

35万人以上の犠牲者を出した7年以上におよぶ内戦を経て、シリアのバシャール・アル・アサド大統領は反体制派に勝利しようとしている。

では、アサド氏はどのようにこの血まみれの残虐な戦争を勝利に導いたのか?

BBCのドキュメンタリー番組「パノラマ」とBBCアラビア語は共同で調査を行い、アサド大統領の戦略における化学兵器の重要性を初めて明らかにした。

以下の地図は、2014年半ば以降にシリアで行われた化学兵器攻撃の場所を時系列にまとめたものだ。

(出典:BBCパノラマとBBCアラビア語の調査、Cartoで作成)


1. 化学兵器は広範囲で使用されていた

BBCは、アサド大統領が化学兵器禁止条約(CWC)に調印し在庫を処分することに合意した2013年9月以降、少なくとも106回の化学兵器攻撃がシリアで行われたことを示す十分な証拠があることを突き止めた。

シリア政府は、首都ダマスカス近郊でサリンを使った化学兵器攻撃が発生し、数百人が犠牲となった1カ月後にCWCを批准した。

犠牲者が苦痛に身もだえする様子を捉えた悲惨な写真は世界に衝撃を与えた。西側諸国はこの攻撃は政府にしか行えないものだと主張したが、アサド氏は反対勢力に非があると述べた。

米国は報復措置として軍事行動を起こすと示唆したものの、シリア政府を支持するロシアがアサド氏に化学兵器の破棄を促したことで、これは取りやめとなった。

しかし、化学兵器禁止機関(OPCW)と国連がシリア政府が申告した1300トンもの化学物質を破壊した後も、同国での化学兵器攻撃は続いた。

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2016年に政府軍が制圧したアレッポで、反体制派がいた地域に住んでいたアブ・ジャアファルさんは、「化学兵器攻撃は恐ろしいものだ」と話した。

「たる爆弾やロケットミサイルは人を即死させる。苦痛を感じる余裕もない。それに対して、化学兵器は窒息死をもたらす。ゆっくりとした死だ。人を溺れさせて酸素を奪っていくような死だ。恐ろしい」

しかしアサド大統領は、政府軍が化学兵器を使ったとは認めなかった。

2018年5月、ギリシャのテレビ番組「スカイ」の取材でアサド氏は、「それは茶番だ」と一蹴している。

「2013年に破棄して以降、我々は化学兵器を持っていない。OPCWは調査を行ったし、我々が化学兵器を持っていないことは明らかだ」と述べている。

https://twitter.com/dwnews/status/994634734662713344



化学兵器の定義

CWCの施行を監督するOCPWの定義では、化学兵器とは、毒性によって死その他の害を引き起こす化学物質を指す。

化学兵器の使用は、明確な軍事標的の有無に関わらず国際人道法で禁止されている。これは化学兵器がその特性上、無差別なもので、不必要な負傷や苦しみを与えるよう設計されているためだ。

OPCWのシリア事実調査ミッションとOPCWと国連の共同調査メカニズム(JIM、現在は解体)は2014年以降、シリア国内で毒性のある化学物質が攻撃目的で使用された疑惑を調査している。

その結果、2013年9月から2018年4月の間に化学物質が兵器として使用された、あるいは使用された可能性の高い攻撃が37件起きていることを突き止めた。

また、国連人権理事会の独立国際調査委員会(COI)を含む国連が主導する機関も、シリアで化学兵器が使われた攻撃がさらに18件あるという納得できる証拠があると結論付けている。


パノラマとBBCアラビア語は、2013年にシリアがCWCに署名して以降に起こったとされる164件の化学兵器攻撃疑惑を調査した。

その結果、164件のうち106件について、化学兵器が使用された信頼性の高い証拠があることを突き止めた。

このうち大々的に報道されたのは数件に過ぎないが、データでは断続的に化学兵器が使われた形跡が示唆されている。

OPCWによるシリア調査団を主導していたジュリアン・タンジェール氏は、「化学兵器の使用は、(政府軍が)リスクを負ってもいいと判断した戦果をもたらしている。また、化学兵器を繰り返し使い続けていることから、リスクに値するものだと判断された」と話した。

以下の図は、106件の攻撃を年ごとに表したもの。2014年には30件の化学兵器攻撃があり、その多くは反体制派が支配していたハマやイドリブで行われた。

翌2015年にはイドリブを中心に28件の化学兵器攻撃があった。イドリブではこの年、反体制派が掃討された。

2016年には23件の化学兵器攻撃が報告されている。攻撃が集中していたアレッポは、激戦の末に政府軍が制圧した。

2017年は17件、2018件は4月までに8件、それぞれ化学兵器攻撃があった。2018年の攻撃は東グータに集中している。


英国のキャレン・ピアース国連大使は、シリアでの化学兵器の使用は「恥ずべき行為」だと話している。

「もたらす被害があまりに悲惨だというだけでなく、化学兵器は100年以上も前から使用が禁止されている兵器だからだ」とピアス大使は強く批判した。


データについて

BBCの調査は、2013年9月以降に報告された164件の化学兵器攻撃を対象とした。

報告はさまざまな情報源から寄せられた。これらの情報源はおおむね公平で、攻撃に関与していないと考えられている。情報源には国際機関や人権擁護団体、医療機関、シンクタンクなどが含まれる。

国連やOPCWによる調査に加え、BBCの調査団は独立したアナリストらの協力を得て、報告された攻撃について得られたオープンソース情報も検討した。こうした情報は被害者や目撃者の証言、写真や動画が含まれる。

専門研究者などのチェックを受けながら実施した調査で、BBCは情報源が1つしかないものや、十分な証拠がないものを調査対象から除外した。その結果、化学兵器が使われた十分な信用できる証拠があるのは106件と結論付けた。

BBCの調査チームはシリア国内で撮影された映像へのアクセスを拒否され、報告された攻撃現場への訪問もできなかったため、証拠を無条件に立証することはできなかった。

しかし、それぞれの案件について手に入れた映像や写真、攻撃の場所や時間帯などの詳細といった証拠の強固さは損なわれない。


調査によると、最も攻撃の報告が多かったのは北西部イドリブ県だった。隣接するハマ県やアレッポ県、そして首都ダマスカス近郊の東グータでも多くの報告があった。

これらの地域では内戦中、反体制派が勢力を維持していた。


化学兵器によるとされる攻撃で最も犠牲者が多かったのはハマ県のカフル・ジタと、東グータのドゥーマだった。

どちらの街でも、政府軍と反体制派の戦闘が行われていた。


報告によると、最も被害の大きかった攻撃は2017年4月4日、イドリブ県ハーン・シェイフンで行われたものだ。反政府側の保健当局によると、この日に80人以上が死亡した。

化学兵器には致死性があるが、国連の人権専門家は、市民が犠牲となった攻撃の大半は市民の多い地域で違法なクラスター爆弾や爆発物を使ったものだと指摘している。

2. 多くの攻撃で、証拠がシリア政府を指し示している

JIMの調査官は2014年6月、2013年のサリン攻撃を受けて米ロが仲介した合意に基づき、シリア政府が申告した化学兵器の材料の破棄と破壊を全て完了したと発表した。

OPCWのタンジェール氏はこの時、「我々がここにあると確認しているものは全て撤去あるいは破壊された」と述べた。

タンジェール氏は一方で、与えられた情報しか持っていないとも話していた。

「我々にできたのは、申告されたものが実際にあることを確認することだけだった。CWCに関することは全て信頼に基づいている」

OPCWはしかし、シリアの申告には「不一致なもの、差のあるもの、矛盾するもの」があり、調査チームがなお解明を進めているとしている。

2018年7月、アフメト・ウズムジュ前OPCW局長は国連安全保障理事会で、OPCWの調査チームは「全ての未解決事項の解明を続けている」と発言した。

2014年6月にシリアの化学兵器の原材料が全て撤去・破壊されたと発表された後も、化学兵器攻撃の報告は続いている。


アブドルハミド・ユセフさんは2017年4月4日のハーン・シェイフンで攻撃で、妻と生後11カ月だった息子、2人の兄弟、いとこ、そして多くの隣人を失った。

ユセフさんは、家の外で家族や近所の人が突然地面に倒れたときの様子を話してくれた。

「みんな震えていて、口から泡が吹き出ていた。恐ろしかった。そこで化学兵器が使われたと分かった」

ユセフさんも意識を失って倒れ、病院に運ばれた。目が覚めたとき、ユセフさんは妻と子供たちについて尋ねた。

「それから15分ほどして、運ばれてきた。死んだ家族が。人生で一番大切な人たちを失くしてしまった」


JIMは、多くの人がこの日にサリンを浴びたと結論付けている。

サリンは青酸カリと比べ20倍の致死性がある。他の神経剤と同様、人間の細胞の興奮を抑える酵素の働きを抑制する。その結果、心臓や呼吸器を含む筋肉がけいれんする。暴露量が多い場合、窒息状態となり数分で死に至る。

共同ミッションは、ハーン・シェイフンでのサリン放出の責任がシリア政府にあると断定している。サリンは、飛行機から落とされた爆弾でまかれた疑いが持たれている。

ハーン・シェイフンの様子が伝えられると、ドナルド・トランプ米大統領は軍用機が出発したとみられるシリア空軍基地へのミサイル攻撃を指示した。

一方、シリアのアサド大統領はハーン・シェイフンでの出来事はでっちあげだと主張した。ロシアは、シリア空軍は化学兵器が保管されていた「テロリストの武器格納庫」を爆撃したため、有毒なガスが流れ出したとの見解を示した。

しかし、この攻撃を調査したOPCWチームのステファン・モグル氏は、ハーン・シェイフンで使われたサリンがシリア政府のものだという証拠を見つけたと話している。

モグル氏によると、2014年にOPCWがシリアの化学兵器を撤去した際に持ち帰ったサンプルと、この攻撃に使われたサリンの間に「明らかな一致」が見られた。


JIMの報告では、ハーン・シェイフンで検出されたサリンは、シリア政府の備蓄にあったサリンの前駆物質として用いられる「メチルホスホニルジフルオリド」から作られた可能性が高いとされている。

「つまり、(化学兵器が)全て撤去されていないということだ」とモグル氏は話した。

OPCWで化学兵器の備蓄撤去を監視していたタンジェール氏は、「私が言えるのは、この物質は申告されたものには入っておらず、我々が訪れた場所にはなかったのだろうということだけだ」

「実際には、我々に与えられた権限では、そこにあると言われたものを確認することしかできなかった。別の調査プロセスで、申告と実際の備蓄に差異があるかが調べられていた」

しかし、BBCによって特定された残り105件の攻撃については? 誰がその背後にいるのか?

JIMの報告書では、硫黄を含むマスタードガスと呼ばれるびらん剤を使った攻撃2件は、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が行ったものだと結論付けた。BBCのデータによると、ISがさらに3件の化学兵器攻撃を行ったことを示唆する証拠がある。

JIMもOPCWも現時点では、IS以外の反政府組織が化学兵器攻撃を行ったという結論は出していない。BBCの調査でも、信頼できる証拠は見つけられなかった。

しかし、シリア政府とロシアは反政府組織がさまざまな場所で化学兵器を使用したと非難しており、OPCWにも報告している。OPCWはこの報告についても調査を行った。

反政府派の武装組織は、化学兵器の使用を否定している。


動画や写真、目撃者の証言といった証拠からは、少なくとも106件の報告された攻撃のうち51件が空爆によるものだという可能性が出ている。BBCは、空からの攻撃は全てシリア政府軍が行ったとみている。

2015年以降、ロシア軍の軍用機がアサド政権を援護して何千回もの空爆を行っているが、国連人権理事会の独立国際調査委員会で専門家は、ロシア軍がシリアで化学兵器を使った痕跡はないと述べている。

OPCWも同様に、反政府武装組織を調査した際にも、彼らに空爆を行える軍事力があるという傍証は見つからなかったとしている。

ドイツのシンクタンク、世界公共政策研究所のトビアス・シュナイダー氏も、反政府組織が空爆による化学兵器攻撃を行えるかを調査した結果、不可能だと結論付けた。

「アサド政権だけが空からの化学兵器投下を行える」とシュナイダー氏は説明する。

英シンクタンク王立国際問題研究所(チャタムハウス)の中東・北アフリカプログラムを統括するリナ・ハティブ博士は、「シリアで観測された化学兵器攻撃の大半には、シリアのほかの組織ではなく、現政権とその友好国の仕業だと示唆するパターンを踏襲している」と話した。

「現政権は時に、その地域を従来型の兵器だけで奪還できない場合に化学兵器を使っている」

106件の攻撃のうち最も死者の多かったハーン・シェイフンではサリンが使われたが、証拠からは、塩素が最も多く使われている有毒な化学物質だということが示唆された。

塩素は「二面性の」化学物質として知られている。合法的に民間で平和利用することもできれば、CWCが禁止する化学兵器としても使われる

BBCのデータによれば、106回の攻撃のうち79件で塩素が使われたとみられる。OPCWとJIMは、調査した案件のうち15件で塩素が使われた可能性があると考えている。


塩素はすぐに蒸発して消滅してしまうため、攻撃で塩素が使われたことを証明するのは非常に難しいと多くの専門家が指摘する。

OPCWのタンジェール氏は、「青酸カリによる攻撃のあった場所に行っても、攻撃直後に行かない限り、周囲の環境から物理的な証拠を見つけるのはほとんど不可能だ」と説明する。

「何も証拠を残さずに使えるという点で、なぜ(青酸カリによる化学兵器攻撃が)何度も何度も行われたのが分かるだろう」

3. 化学兵器は戦略的に使われたとみられる


報告された106件の化学兵器攻撃を発生日ごとにまとめてみると、使われ方に一定のパターンが見えてくる。

攻撃の多くは、同じ地域に同じタイミングで集中して起きた。攻撃が集中した時期は、シリア政府軍の進軍のタイミングと合致している。2014年にはハマとイドリブ、2015年にはイドリブ、2016年末にはアレッポ、2018年には東グータといった具合だ。

チャタムハウスのハティブ博士は、「化学兵器は、シリア政府が地元住民に対し、その土地にいられると不都合だという強いメッセージを送りたいときに使われた」と指摘した。

「シリア政府にとって化学兵器は、住民に恐怖を与える究極の罰というだけでなく、長引く紛争で軍事力が衰えたときに使える安くて便利な武器だ」

「化学兵器ほど人を怖がらせるものはない。化学兵器が使われると、住民は必ずその地域から逃げ出し、多くの場合は戻ってこない」

数年間にわたり戦闘が続いたアレッポにも、こうした戦略が使われたようだ。

アレッポでは政府軍が街全体を制圧するための最終攻撃を仕掛けた際、反政府勢力の戦闘員と住民が西側の包囲地帯に閉じ込められた。


反政府勢力がいた地域はまず、伝統的な兵器による激しい空爆を受けた。その後、数々の化学兵器攻撃が行われたという報告があがっており、数百人の犠牲者が出たとされている。アレッポは間もなく政府軍が制圧し、人々は他の反体制派地域へと移動を余儀なくされた。

ハティブ博士は、「我々が目撃したパターンでは、シリア政府は自らの戦略において重要な地域で化学兵器を使用した」と説明する。

「こうした地域を奪還する最終段階で化学兵器を使った理由は、ただ現地住民を逃亡させるためのようだ」

2016年11月末から12月にかけて行われたアレッポ東部への攻撃では、11件の塩素攻撃が報告されている。うち5件は反政府勢力の戦闘員と支持者が降伏し避難に合意する直前の、最後の2日間に集中している。

反政府勢力の監察医だったアブ・ジャアファルさんは、この最後の数日間にアレッポに滞在していた。ジャアファルさんは化学兵器によるとされる多くの犠牲者の遺体を検死した。

「遺体安置所に行くと、塩素の刺激臭が遺体から漂っていた」とジャアファルさんは話した。「遺体には、塩素による窒息死だという明確な痕跡があった」

塩素は悲惨な効果を生み出すとジャアファルさんは説明する。

「塩素ガスは人間を窒息させる。パニックと恐怖をまん延させる」

「常に戦闘機やヘリが頭上にいて、空爆が続いた。しかし、何より化学兵器の被害がひどかった」

液体の塩素は、散布されると気体に変わる。このガスは大気よりも重いため、より低い場所へと沈んでいく。そのため、建物の地下や防空壕に隠れていた人たちが最も被害を受ける。

塩素のガスが目やのど、肺といった粘膜に触れると、酸が発生して粘膜を傷つける。ガスを吸い込むと肺胞が液体を分泌して、吸い込んだ人を溺死させる。

「地上に上がればロケット弾を浴びるし、地下に潜れば青酸カリで殺される。人々は恐慌状態だった」とジャアファルさんは語った。

シリア政府は塩素を兵器として使用したことはないとしている。しかしBBCのデータによると、アレッポで報告された11件の化学兵器攻撃はいずれも空から、反体制派がいた地域で行われていた。

アレッポ戦の最終週には、12万人以上の市民が街から逃げ出したという。これがシリア内戦の転換点となった。

同じようなパターンが、首都ダマスカス近郊で反体制派の支配下にあった東グータ地区のデータからも読み取れる。

東グータ地区では、2018年1~4月の間に多くの攻撃が報告された。

下の地図には、東グータで報告された化学兵器攻撃を時系列で並べた。赤い点がその日に行われたとされる攻撃、ピンクの領域が反政府組織の保持範囲を差す。


東グータ最大の街ドゥーマは、この4カ月の間に4件の化学兵器攻撃を受けたと報告されている。政府軍は地上作戦を展開する前に、この街で激しい空爆を行った。

ドゥーマにいた医師や救助隊によると、最後にした最多の犠牲者を出した化学兵器攻撃は4月7日に行われた。黄色い大量生産のガス缶が住宅密集地帯のバルコニーに落とされたと報じられている。

反政府組織は翌8日に降伏した。

反政府組織側の活動家が発表した動画では、攻撃を受けた住宅の階下に隠れていたとされる子供を含む30人以上の遺体が映っている。

攻撃のあった日の夜に現場を訪れた活動家のヤッセル・アル・ドマニさんは、遺体は口から泡を吹き、薬品によるものと思われるやけどを負っていたと話している。

現場近くの建物から映された動画では、同じ服を着て、同じようなやけどを負った子供たちの遺体が、身元特定のために並べられていた。

BBCは、この住宅地から遺体が病院へと運ばれたのを目撃したという18人から話を聞いた。

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この攻撃から2日後、ロシア軍の専門家が現場を訪れて、塩素を含む化学物質の痕跡は見られないと発表した。ロシア政府は、この攻撃は反体制派が英国の援助を受けて行った自作自演だと主張した。

英政府はこの主張を「馬鹿げていて不合理だ」として一蹴している。

OPCWのシリア事実調査ミッション(FFM)チームは2週間後に現場を訪れ、バルコニーに残っていたガス缶からサンプルを採取した。

OPCWは7月、サンプルからは爆発物の残骸と共に「塩素の影響を受けたさまざまな化学物質」が検出されたと発表した。


FFMは現在もこの結果の優位性を確立する作業を行っているが、西側諸国は、この攻撃の犠牲者は塩素にさらされたと確信を持っている。

ドゥーマでの攻撃の1週間後、米国と英国、フランスは「シリア政府の化学兵器プログラムに関連している」とする基地3カ所に空爆を行なった。

西側による空爆は、シリア軍が東グータ奪還を発表する数時間前に行われた。政府軍の東グータ制圧までの間に14万人が家を負われ、5万人以上が北部の反政府派が保持する地域に避難した。

ドゥーマに家族で暮らしていたマヌアル・ジャラデフさんは「あちこちが破壊された。みんな泣きながら家や子供に別れを告げていた。疲れきった悲しいった顔を見るのはとても心が痛んだ。忘れられない。最後にはみんな、もうたくさんだと言っていた」と当時の様子を語った。

シリア政府は、化学兵器を使った疑惑に関するBBCの質問には答えないだろう。

BBCパノラマの取材班はドゥーマへ行き、報告された化学兵器攻撃の現場を調査する計画だったが、政府は許可しなかった。政府への取材も断られた。

国際社会はシリア国民を助けられなかったのだろうかという質問に、OPCWのタンジェール氏は「そうだと思う」と答えた。

「アサド政権にとっては生きるか死ぬかの戦いだ。後戻りはできない。それは理解できる」

「しかしシリア政府が使った手法と、それによって起きたいくつかの残虐行為は(中略)理解の範疇を超えている。恐ろしいことだ」

では、アサド大統領は罰を逃れたのだろうか?

ピアース英国連大使はそうとは考えていない。

「証拠集めは続いている」とピアース氏は語った。

「いつの日か正義の鉄槌が下るだろう。我々はその日を早めるために最善を尽くす」


報道番組「Panorama: Syria's Chemical War(パノラマ:シリアの化学戦争)」は2018年10月15日に英国のBBC1で、10月23日にはBBCアラビア語でそれぞれ放送されました。

プロデューサー:アリス・カミングス、ケイト・ミード

オンライン制作:デイビット・グリッテン、ルーシー・ロジャース、ジェリー・フレッチャー、ダニエル・ダンフォード、ナッソス・スティリアノー

(英語記事 How chemical weapons have helped Assad

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-45872952

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