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2019年2月7日

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欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長(大統領に相当)は6日、「ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)をどのように安全に進めるか、実施方法を何も計画をせずに推進した人たち」には「地獄に特等席が用意されている」と発言し、物議をかもしている。

トゥスク氏は、アイルランドのリオ・バラッカー首相とブリュッセルで会談した後の記者会見でこう発言した。

イギリスの欧州連合(EU)離脱派議員からは、トゥスク氏が「傲慢」だと批判の声が挙がった。また英首相官邸も、トゥスク氏が「このような物言いが何かの助けになると考えていたのか」疑問だと述べた。

イギリスは3月29日にEUを離脱するが、その条件をまとめた離脱協定はイギリス議会の承認を取れておらず、合意なしブレグジットとなる懸念が高まっている。

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英首相官邸の報道官は「我々は国民投票に向け、健全で活発な運動を展開した。このイギリス史上最大規模の民主主義的な活動を通じて、国民はEU離脱を決めた」と話した。

それだけに、今は関係者全員がブレグジットの実現に集中すべきだと報道官は述べた。

トゥスク氏のツイッターアカウントは、記者会見の直後に「ブレグジットをどのように安全に進めるか、実施方法を何も計画せずに推進した人たちに、どういう地獄の特等席が用意されているか考えているところだ」とツイートした。

https://twitter.com/eucopresident/status/1093112742293266435

記者会見の最後にアイルランドのバラッカー首相が「イギリスのメディアにひどく叩かれますよ」とトゥスク氏に話しかけたのを、マイクが拾っている。

トゥスク氏はこれにうなずき、2人は笑っていた。

EU側はすぐにトゥスク発言について説明し、BBCのアダム・フレミング・ブリュッセル特派員に、地獄の特等席はブレグジット推進派の死後に用意されるもので「今すぐではない」と強調した。

欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長は、バラッカー首相との記者会見で、自分にとって地獄とは欧州委員会の長という自分のこの仕事のみだと、トゥスク氏の発言を一笑に付した。

欧州議会のブレグジット交渉担当ヒー・フェルホフスタット氏もツイッターでトゥスク氏の発言を引用し、「ルシファーが(ブレグジット推進派を)歓迎するかは疑問だ。彼らはイギリスの次に地獄を分断しようとするかもしれないから」とジョークを飛ばした。

イギリスでは賛否両論

トゥスク氏の発言について、イギリスではブレグジット推進派の議員たちがソーシャルメディアで批判の声を上げた。

与党・保守党の代表的な離脱推進派のジェイコブ・リース=モグ議員はツイッターで、「トゥスク氏は神学者としてはトマス・アクィナスに遠く及ばないし、モーゼの十戒に偽証してはいけないと書いてあるのを忘れているようだ」と皮肉った。

https://twitter.com/Jacob_Rees_Mogg/status/1093162684286156800

元イギリス独立党(UKIP)党首のナイジェル・ファラージ欧州議会議員も、「ブレグジット後にはお前のような選任されていない高慢ないじめっ子から解放され、自分たちの手でイギリスを統治できる。私にはむしろ天国のようだ」とツイートした。

そのほか、アンドレア・レッドソム下院院内総務やデイヴィッド・デイヴィス元EU離脱相も、トゥスク氏の発言を非難している。

一方、北アイルランドのシン・フェイン党のメアリー・ルー・マクドナルド党首はトゥスク氏を擁護。地獄の特等席は、ボリス・ジョンソン前外相やリース=モグ議員といった「過激」で「支持できない」、「急進的」なEU離脱派議員のための場所だと述べた。

2度目の国民投票の実施を訴えている最大野党・労働党のベン・ブラッドショウ議員もトゥスク氏は「全く正しい」と述べ、ジョンソン前外相やデイヴィス元EU離脱相といった離脱派の主要議員は、「真実を突きつけられてつらいだろう」と話した。

再交渉はないと強調

トゥスク氏はバラッカー首相との共同記者会見で、EU加盟27カ国は昨年12月の時点で、離脱協定には「再交渉の余地がない」ことを確認していると述べた。

またイギリスのEU残留支持者に向かっては、「私は心の底から、いつもあなた達と共にいる」とメッセージを送った。

一方で、「事実は間違えようがない。現時点で、イギリスの首相と野党党首が離脱を推進している以上、この疑問は除外される」と、イギリスにはEU残留という選択肢がないことを強調した。

「今のイギリスに、EU残留を推進する政治勢力や効果的な指導力は存在しない。残念ながら、事実には抗えない」

争点となっているアイルランドと英・北アイルランドの国境問題と、それをめぐる平和プロセスについては、引き続きEUの「最優先事項」だと話した。

その上で、テリーザ・メイ英首相が「北アイルランドの平和について実現可能な保証をしてくれれば、イギリスは信頼できる友人としてEUを離脱できるだろう」と述べた。

バラッカー首相は、ブレグジット後のイギリスとの関係については「さらなる交渉をする余地がある」と話したものの、離脱協定が「考えられる中で最善の取り決め」であることは変わりないと話した。

また、アイルランド国境に検問を置かないための「バックストップ(防御策)」は、「アイルランド島で再び厳格な国境管理が行われないために必要な法的保障」だと述べた。

イギリス議会では、バックストップが発動すると実質的にイギリス全体がEU関税同盟にとどまるほか、北アイルランドがそれ以外のイギリス各地と別扱いになることが問題視されており、離脱協定の承認を妨げている。

メイ首相は1月30日、バックストップの代わりとなる取り決めをEUと再交渉することを議会に約束している

メイ首相ブリュッセル入り

メイ首相は7日、離脱協定の法的な変更を求めてブリュッセル入りする予定。この変更が、イギリス議会で協定を通過させる助けになるとみている。

また、8日にはダブリンでバラッカー首相と会談する予定だ。

メイ首相は2016年の国民投票時にはEU残留を支持していたが、首相になって以降は一貫して、国民の総意であるブレグジットを実現すると述べている。

一方、労働党のジェレミー・コービン党首は首相宛ての書簡で、労働党が離脱協定を支持するのに必要な5つの条件を提示した。

  • イギリス全土を対象とする関税同盟
  • 単一市場との緊密な関係
  • 権利とその保護に対する「強力な提携」
  • EUの諸機関や出資プログラムに参加するための「明確な努力」
  • 将来の安全保障の詳細についての「ぶれのない合意」

その上で、バックストップに対する「修正を求めているだけ」では、十分な回答とは言えないと釘を刺している。

(英語記事 Tusk: Place in hell for no-plan Brexiteers

提供元:https://www.bbc.com/japanese/47153282

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